日本は暑さ厳しい日々が続いています。私は先月、ヨーロッパ、アメリカ、日本に滞在していました。

先月号では、マラーホフのラストパフォーマンスについて集中的に書かせて頂きましたので、今月号は少し前の話になりますが6月中旬から滞在したロシア、トルコの話題も加えお伝えしたいと思います。

6月16日
16日から数日間サンクトペテルブルグの白夜祭を訪れ、ワガノワバレエ学校の卒業公演を見て来ました。
会場は、マリンスキー劇場。私が13歳の時、海外で一番最初に訪れた劇場です。
それ以来数回訪れましたが、本当に久しぶりで懐かしい思いで一杯になりました。
ニコライ・チスカリーゼがワガノワバレエ学校の校長に就任したと言うニュースは記憶に新しいですが、今ではバレエ学校内も新しい体制に落ち着き、先生や生徒もバレエに集中し、以前通りの雰囲気を取り戻していました。
公演は、3部構成のプログラムでした。

マリンスキーの新劇場外観 Photo:Emi Hariyama

マリンスキーの新劇場外観
Photo:Emi Hariyama

PROGRAMME:
1部 Konservatoriet (Danseskolen)
音 楽 Holger Simon Pauli
振 付 August Bournonville
2部 ガラコンサート
3部 パキータ
音 楽 Ludwig Minkus
振 付 Marius Petipe

1部の「Konservatoriet」は、ワガノワバレエ学校ならではの完璧な基礎テクニックとメソードの統一感を見せ付けられました。私も卒業試験を思い出す、高レベルなハイテンポな振付で、バレエ団員でも踊りこなすのは難しい作品でした。しかし生徒達はさすがいつもレッスンで鍛えられてるだけあり、しっかりと踊りこなしていて感心しました。
2部のガラコンサートでは、黄金時代から「タンゴ」、「ダイアナとアクティオン」よりコールド・バレエ付きのパ・ド・ドゥ、ロシアのバレエ学校ではお馴染み「くるみ割り人形」からパ・ド・トロワなど、内容豊かで飽きない構成。入学したてのバレリーナの卵から、バレエ団に入団目前の卒業生までが持てる力を存分に発揮し、幅広く踊りました。
3部は「パキータ」。アントレでは低学年がマーチで登場。卒業生が主役のカップルを、6、7年生から卒業学年までが脇を固め、生徒総出で華やかに踊りました。
公演後、舞台袖ではチスカリーゼが指揮をとり、先生方達だけで写真撮影、また卒業生達もお世話になった先生方と記念撮影するなど懐かしい光景でした。
日本やロシアで古くからお世話になっているリュドミラ・コワリョーワ先生、マリーナ・ワシリエワ先生、マリア・グリバーノワ先生方とお話しましたが、皆満足そうでした。

ワガノワ公演後 Photo:Emi Hariyama

ワガノワ公演後 Photo:Emi Hariyama

6月18日
タチアナ・テレホワに再開しました。ボストンバレエ団時代にいつもリハーサルして頂きお世話になった先生、彼女は今マリンスキー劇場の教師をしています。
マリンスキー新劇場の中を案内して頂いたり、久しぶりにお話し、素晴らしい時を過ごす事ができました。

6月19日
ワガノワバレエ学校を訪れました。いつ訪れても20年以上前の記憶がよみがえります。
中の一部や外観は工事をして綺麗になったものの、伝統ある教室などはそのまま残してあり、この先もずっと受け継がれていくのだなあ、と納得の想いで学校を後にしました。
素晴らしい数日を過ごせました。

ワガノワバレエ学校入り口 Photo:Emi Hariyama

ワガノワバレエ学校入り口
Photo:Emi Hariyama

マリンスキー内見つけたコルパコワのポスター Photo:Emi Hariyama

マリンスキー内見つけたコルパコワのポスター
Photo:Emi Hariyama

6月26日
第4回イスタンブールコンクールファイナルガラを見ました。
今回のスペシャルゲストは
ウラジーミル・マラーホフ、ベアトリス・クノップ、ジョゼッペ・ピコーネ、レチシア・ギウリアーニの4名でした。
コンクールの様子はまた別の機会にレポートしたいと思いますが、ガラの事にふれたいと思います。
ガラの一部は、今回のコンクールの受賞者達が踊り、クラッシックとモダンを交互に見る事が出来る、均整の取れたプログラム。
その後、ゲストの出演。
まずジョゼッペ・ピコーネとレチシア・ギウリアーニが「ロメオとジュリエット」から15分もの長編パ・ド・ドゥを踊りました。初めて観たネオクラッシックの作品でしたが、流れも美しく照明も綺麗で美しかったです。
マラーホフとベアトリスは、今年の1月と3月にマラーホフとフレンドで初演した「オールド・マン・エンド・ミー」を踊りました。ジャンプやピルエットなどテクニックで見せる作品ではありませんが、コミカルな部分、そして最後は情感たっぷりに踊り拍手喝采を浴びていました。

イスタンブールバレエガラ Photo:Emi Hariyama

イスタンブールバレエガラ Photo:Emi Hariyama

イスタンブールバレエガラ Photo:Emi Hariyama

イスタンブールバレエガラ Photo:Emi Hariyama

7月中は4週間アメリカにて、サマーインテンシブの講師を務めました。
そのうちの2週間は、日本から将来のバレリーナ達を10名ほどお連れしました。
アメリカで現地の子供達に交じって、連日5時間のバレエのお稽古だけではなく一緒にお買い物したり、ビーチに行ってディナーを一緒にしたり泳いだりと素晴らしい時間でした。
最初は、物怖じし英語も一言も交わさなかった子供達が、連日触れ合う中で打ち解け、帰国する2週間後には、お別れが悲しく大泣きで、感動的なお別れとなりました。
レッスン内容は、クラッシックが毎日、それに加えコンテンポラリー、パ・ド・ドゥ、バレエの歴史、ポワント、バリエーションなどが日替わり行われました。
先生方も素晴らしい方々が集まりました。
ウラジーミル・マラーホフやNYシティバレエ団プリンシパルのゴンザロ・ガルシア始め、あらゆるメソードの先生が終結し、日々刺激的なレッスンとなりました。

7月26日にはカリフォルニアのオレンジカウンティにて"Natalia and Ivan"と称する公演を見ました。
その名の通りナタリア・オシポワとイワン・ワシリエフの二人が、音楽家を除いて二人きりで3部構成、2時間弱の公演でした。
3000客数ある会場の八割方お客様が入っていたのは凄い事だと思いました。大きな舞台で二人きりで公演するのはどのような雰囲気になるのかと思っていましたが、空間を上手に使い、長すぎず短すぎず中々面白いプログラムでした。
クラッシックの作品は無く、オハッド・ナハリンの作品などコンテンポラリーのみの構成、3作品のうち2作品は世界初演でした。
アメリカで講師を務めていて国民性の違いをしみじみと感じましたが、色々な国でこのような機会が持てるのは今後にもきっと役立つと思います。

来月も色々な国から日記をお届けいたします。

インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi International Arts
針山愛美のバレエワールド

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