11月、ベルリンは日々、日が短くなって冬到来です。

11月9日はベルリンの壁が倒れてから25周年記念という事で、ブランデンブルク門で盛大に式典が行われました。
壁崩壊の立役者でもあったゴルバチョフ元大統領がいらっしゃり、バレンボイム率いる国立歌劇場オーケストラがブランデンブルク門で、ベートーベン第九を演奏するなど盛り沢山の式典でした。
私は、ブランデンブルク門の真横で式典を見ていましたが何万人もの人で賑わい素晴らしい一夜でした。
それと同時に、毎年行われている光の祭典が街を彩っています。

(C)Emi Hariyama

(C)Emi Hariyama

今回も数カ国からの日記をお届けいたします。

10月16日、ニューヨークから帰国し空港からそのまま「ベジャールバレエ」のゲネプロを見に行きました。
公演は、10月17、18、19日イベント会場Tempodromで行われました。
この日は、以下の二つの作品のゲネプロを見ました。
「Bolero ボレロ」
音楽 Maurice Ravel
振付「モーリス・ベジャール」
「Le Sacre du printemps 春の祭典」
振付「モーリス・ベジャール」
音楽 Igor Strawinsky

「ボレロ」は、ベジャールバレエをバックにポリーナ・セミオノワが踊りました。
ポリーナは、直接ベジャールに伝授してもらう機会は無かったので、一つ一つの動きの意味合いが少しあいまいなのかな、と思う所も有りましたが、素晴らしい身体能力と個性で魅了しました。
私の個人的な感想ですが、9月に日本で見た「東京バレエ団」と競演したシルヴィ・ギエムの印象があまりにも鮮明で強く残っていたため、比較してしまい多少物足りない部分もありましたが、素晴らしいボレロでした。
これから何回か踊る機会があるのなら、踊りこなれてもっと強い個性が出るのではないかと思いました。
「春の祭典」は、本当に素晴らしかったです。初めて見たわけではなかったのですが、今回は全く違った印象を受けました。リハーサルだったのにもかかわらず、物凄いエネルギーで、作品からメッセージが強く伝わってきました。素晴らしかったです。

10月19日、20日、22日
26日のウクライナ選挙を目前に、先月に引き続きキエフ・バレエ学校で指導をしてきました。その際、キエフ・バレエ団の公演を見ました。
19日「バヤデルカ」、20日「ジゼル」、22日オペラ「アレコ」とバレエ「カルメン」と、まさしく芸術週間となりました。
キエフ・バレエ団の「バヤデルカ」は、日本でも見た事がありますが、今回は若いキャストでなかなか良かったです。「ジゼル」はオーソドックスなロシア版の振付で、今ではヨーロッパではなかなか見ることができない、本当に元祖「ジゼル」、懐かしかったです。
オペラ「アレコ」は、音楽セルゲイ・ラフマニノフで、私の好きな作曲家の一人。ドイツではあまり見る機会が無く、初めてみたオペラでした。チャイコフスキーのはたらきかけにより、1893年5月9日にモスクワのボリショイ劇場にてアリターニの指揮で初演されたそうですが、キエフでは同年10月にラフマニノフの指揮で初演されたそうです。オペラと言ってもダンスのシーンが多く、オペラバレエという演出で面白かったです。バレエ「カルメン」は素晴らしかったです。アロンソ版でしたが、ダイナミックでよく揃っていて、ソリストも素晴らしかったです。

バレエ学校のリハーサル (C) Emi Hariyama

バレエ学校のリハーサル (C) Emi Hariyama

キエフのマイダンにて (C) Emi Hariyama

キエフのマイダンにて (C) Emi Hariyama

11月8日
ベルリンフィルハーモニーにてベートーベン「第九」を聞きました。
指揮 サイモン・ラトル
心から感動しました。最近コンサートに行く時間が無かったのですが、やはり芸術、素晴らしい音楽(もちろんバレエ、絵画、オペラ、など全ての文化芸術)は、人間を元気にしてくれると思いました。
9日は、冒頭でもふれた、バレンボイム指揮の同じくベートーベン「第九」をブランデンブルク門で聞きましたが、比較出来る会場の環境では無い物の両方素晴らしい演奏で幸せな2日でした。

11月2日にベルリンフィルハーモニーで公演をさせていただく機会がありました。
http://www.berliner-philharmoniker.de/konzerte/kalender/details/20623/

ベルリンフィルハーモニーの現役バイオリニストでもあるHolm Birkholz(ホルム ビークホルツ)氏とのコラボレーション公演。
公演タイトルは、ドイツ語で「Blütenträume」、日本語では、「花の夢」。
彼とは、数年前に知り合い、オペラ協会主催の中央駅プロジェクトで1時間の公演をベルリン中央駅構内で披露、ベルリンの美術館での野外公演、郊外の教会跡地など色々な所で共演して来ました。
私が、ベルリンフィルハーモニーとコラボレーション公演をさせていただくのはこれが三回目です。
一回目は、ベルリンフィルハーモニーが毎年行っているイースター音楽祭で共演しました。昨年はベルリンフィルハーモニーの歴史で初めてバーデンバーデンで行われました。「フリカ ボーダ美術館」を公演のために締め切り、美術館全体が公演会場となり公演プロデュースしました。
二回目は、2013年の夏至の日に、ベルリンフィルハーモニーの特別企画でレイトナイト(深夜)公演と題し、夜中の23時半から24時半までの一時間公演でプロデュースさせていただき、踊らせていただきました。

今回は、三回目となりましたが、日曜日の8時からのオフィシャル公演で、このような企画はベルリンフィルハーモニーではほぼ初めての事。世界のベルリンフィルハーモニーで、作品をプロデュースする機会に恵まれるなど思っても居なかった事でした。
ホルム氏が、去年から作曲して下さった、日本に寄せる「四季」は世界初演となりました。
約30分の曲で四季の文字通り、「春」「夏」「秋」「冬」の4曲から成り立つ音楽です。
この曲を聞いた時から、ステージに日本風の家をイメージした空間と、木を使おうと思っていました。
自らベルリン郊外で木を探し、その木々を自分でデザインしたい形に作り上げステージの背後にセッティング。

リハーサルより(C) Emi Hariyama

リハーサルより(C) Emi Hariyama

日本風の家では、影絵を使いたかったので、自らライトを設置し操作しながら影絵を演じました。影絵を演じながらも早替えを家の中で三回するという間一髪の演出。
四季のイメージの四つの異なった衣装をビジュアル的にも見ていただきたかったので、出来るだけ早く簡単に着替えられる様に工夫してデザインしました。

リハーサルより(C) Gudrun Birkhorz

リハーサルより(C) Gudrun Birkhorz

「春」は松の木の影絵から始まり、着物を来た和の女性を演じました。
「夏」は暑い日に飛び交う虫を家の中から光で見せた後、カラフルなサマードレスに帽子、パラソルを持って舞台へ。フィルハーモニーで普段コンサートの際、歌がある曲目の際コーラスの方々が立つ段差の部分に海をイメージした布を設置し、布を使ってまといながら踊りました。
「秋」は紅葉をイメージした真っ赤のドレスに、木枯らし感じさせる金の衣装をまとい、走り、踊り、ノンストップでインプロビゼーション(即興)ダンスで五分強踊り続けました。
「冬」は、白の場面。影絵で孤独な鶴を演じた後、自らが鶴となり、雪の中で立っている、スポットライトの中で静かに雪を降らせて、最後は春の桜のシーンに戻って静かにライトが消えて行く、、、
と言う演出でまとめました。
本番は30分があっという間で、無我夢中でしたが"もう少しここをこうすれば良かった"など、反省点は尽きません。

しかし、ベルリンフィルハーモニーでこの様な公演をさせていただけたことが未だに信じられず、本当に感謝の気持ちと共に、今後もこの様な機会に積極的に挑戦して行くのが一つの夢でもあります。クリエーションには終わりが無いと確信した公演でした。

この作品は、また機会があればまた演じたいと思います。

12月は今年最後の月、私にとってあっという間の一年でした。来月も各地からレポートしたいと思います。

インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi International Arts
針山愛美のバレエワールド

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