ヨーロッパは緑が美しい季節に入り、外に出るのも爽やかで嬉しい気分になる日々が続いています。

今月は、ベルリンやスロバキアのいろいろな都市でに滞在しました。

5月の一週目はベルリンでの短期留学ワークショップで素晴らしい未来のバレリーナ達とベルリンで過ごし、一度皆と日本へ戻って、数日後に今度は一人でベルリンに戻りました。

5月14日
シラー劇場で上演されたベルリン初演の作品(ナチョ・ドゥアトの作品)を含むトリプルビルを見に行きました。

<プログラム>
●STATIC TIME
振 付:ナチョ・ドゥアト
●CLICK-PAUSE-SILENCE
振 付:イリ・キリアン
●WHITE DARKNESS
振 付:ナチョ・ドゥアト

ナチョ•ドゥアトの作品は、空から砂が降ってくるシーンが素敵で印象に残りました。全体的には、最初と最後に上演された二作品は似た雰囲気の作品で少し重い、かつ大人の雰囲気のある作品でした。
キリアンの作品は、短いなりに内容の詰まった作品でしたが、この作品がナチョ・ドゥアトの二作品の間に上演される作品として選ばれたのは少し疑問でした。
初演の日にしては、空いてる席もありましたが、観客からは盛大な拍手に包まれました。ただし、新聞やラジオの評はかなり賛否両論でした。

5月17日〜
ハンガリーのブタペストに到着し、そこから車で走ること2時間半。ハンガリーの雄大な大地を走り抜け、スロバキアの第二の都市、コシシェに到着しました。とても素晴らしい街ですぐに大好きになりました。

この町にある劇場は、本当に美しく素晴らしく、小さいですが本当に豪華。1899年に建てられ戦争の被害もなくそのままの形が残っているそうです。
この劇場で9月にマラーホフ版の『ラ・バヤデール』が上演されます。
今回は、その振り付け指導をするために、この町に来ました。
私にとってはバレエ団で振り付け指導するのは初めてですので、責任感を感じながら仕事をさせて頂きました。

劇場向かいの噴水 (C) Emi Hariyama

劇場向かいの噴水 (C) Emi Hariyama

自分が踊っている時にはそこまで気にならなかった部分も、見本を見せて振り移しするという事は全てを把握していなければいけません。
日々リハーサルが終わってからも、確認、予習、チェックなど時間の掛かる作業でした。ダンサー以上に、指導者は全てを把握していないと、きちんとした振り付けを伝えられないことを痛感し、日々勉強の日々で、『ラ・バヤデール』丸秘ノート一冊出来上がりました。(笑)
このような機会を与えてくださったバレエ団のディレクター、アンドレイ・スハーノフ氏とマラーホフ氏には本当に感謝です。
滞在中に、沢山のオペラ、バレエも見に行きました。

劇場 (C) Emi Hariyama

劇場 (C) Emi Hariyama

5月27日
『Night-exam preparing for musical』
とてもオリジナリティーのある作品を見ました。
演出・振付:Ondrej Šoth
ステージ :Václav Janeček, Ondrej Šoth
ストーリー:Zuzana Mistríková
セット、衣装デザイン:Andrii Sukhanov
フィルム :Vasyl Sevastyanov
(全てスロバキア語ですが私の読み方に自信が無い為そのまま掲載させて頂きました)

一幕は、ミュージカルに出演する為のオーディションという設定で、ダンサー達がスタジオで切磋琢磨するシーンでした。
ダンサー達が各自で振付したというソロを順番に踊って行くシーンは、コメディあり、わざと不様に踊ったりと観客は爆笑の渦に包まれました。
二幕は実際にショーが上演されているシーンで、バレエ、社交ダンス、モダン、ヒップホップ、ジャズの全ての分野の踊りを次から次へと披露してくれました。
このバレエ団のダンサー達の何でもこなせる才能には頭が下がりました。素晴らしいエネルギー、セクシーでありダイナミックで魅力満載。
私は、言葉がわからなかったのが残念でしたがスロバキア語で語られる台詞が絶妙に面白い様で、観客席は常に大爆笑の渦、最後は総立ちになりました。

『Night-exam preparing for musical』

『Night-exam preparing for musical』

5月29日
『眠れる森の美女』の公演を観ました。
音 楽:ピョートル・チャイコフスキー
振 付:Mikhailo Novikov ,マリウス・プティパ, Ondrej Šoth
台 本:Zuzana Mistríková, Ondrej Šoth ,I.A.Vsevoložského
演 出:Ondrej Šoth
セット・衣装:Andrii Sukhanov

『眠れる森の美女』

『眠れる森の美女』

この作品も、大変オリジナリティある作品に仕上がっていました。
1幕は、『眠れる森の美女』の原作版音楽から短縮し、オーロラ姫が100年の眠りに入る所までをネオクラッシックバレエの全く新しい振付で上演されました。
2幕はチャイコフスキー6番シンフォニーを使って全く新しい解釈の演出。
カラボスが、かなり重要な役どころで2幕前半をリードして行き、周りの群舞は上流階級の人々という設定。エイフマンの『チャイコフスキー』をベルリン国立バレエ団で踊っていた時の1幕の最後でも上流階級の人々が踊るシーンがあり、そちらはチャイコフスキー五番シンフォニーのフィナーレでした。私も大好きなシーンでしたが、それを思い起こさせるダイナミックな踊りで素晴らしかったです。
そして突然、オーロラ姫の結婚のパ・ド・ドゥだけは、『眠れる森の美女』の原作版に戻りそこだけ華やかな雰囲気に、と、思った瞬間最後は又カラボスが登場し、終結は観客の想像にお任せ、、、という所で幕が閉じました。
予想出来ない展開、一瞬たりとも飽きない演出、舞台効果は見事でした。

『眠れる森の美女』

『眠れる森の美女』

『眠れる森の美女』

『眠れる森の美女』

6月2日
バレエ『カルメン』を見ました。
演出・振付:Ondrej Šoth
ステージ:Juraj Fabry
ストーリー:Zuzana Mistríková
セット・衣装デザイン:Andrii Sukhanov

こちらは、70分の作品でビゼーとシドリンの曲に、deep folk song,cafe europaという歌の音楽の一部分を加えて上演されていました。
民族舞踊をダンサー達が太鼓を使って実際に演奏しながらの舞台、大変魅力的でした。
何作品かバレエ団の作品を見ましたが、演出・振付家の(Ondrej Šoth)の作品はどれも、バレエのストーリーを明確に伝える素晴らしい物で、全ての作品が全く異なる素晴らしい物に仕上がっていました。
同じ演出家が何作品か演出して行くと、少しは似てくるの傾向にあると思うのですが、彼は全てが全く違った思想のもとに作られています。素晴らしいアイデアの持ち主で色々とインスピレーションを頂きました。
また、衣装デザインはバレエ団の芸術監督(アンドレイ・スハーノフ)本人が担当。
これもセンスの良い美しく、またモダンの時はハッとするようなモードで色使いも素敵でした、皆、多才です。
このバレエ団で上演する(マラーホフ版)『ラ・バヤデール』がどの様に仕上がるか楽しみになってきました。

その他、
「リゴレット」「蝶々夫人」「マノン」オペラ3作品を見ました。
こちらは、全てオーケストラでの上演で、劇場の音響が素晴らしく、見応えがありました。但し、この町に文化芸術は強く根付いている訳ではないようで、空席があるのがもったいなく思いました。

私は、6月一週間目の週末一日だけ弾丸帰国で日本へ帰り、そしてまたスロバキアに戻り、数日最終リハーサルを行いました。
6月中旬にはベルリンに戻り、自分自身の本番が2回あります。
ベルリンでは、6月21日からマラーホフ元芸術監督の『ラ・バヤデール』がドイツ・オペラで上演されますのでその様子もお伝えしようと思います。

劇場の天井 (C) Emi Hariyama

劇場の天井 (C) Emi Hariyama

オペラ終演後 (C) Emi Hariyama

オペラ終演後 (C) Emi Hariyama

インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi International Arts
針山愛美のバレエワールド

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