11月から12月にかけてベルリンと日本を二往復しました。

その間、パリで起こったテロやヨーロッパの難民問題、ロシアと各国との関係など、いろいろと厳しいニュースが報道されました。ヨーロッパの中心であるドイツのベルリンでも緊迫した状態が続くと思いますが、芸術文化には影響しないで欲しいと強く思います。芸術がその緊迫を解く力になって欲しい、そんな願いでいっぱいです。
実際には、ベルリンは普段とあまり変わらない雰囲気、クリスマス・マーケットに訪れる人々が溢れ、華やかに暖かく街を彩っています。

クリスマスマーケット Photo:Emi Hariyama

クリスマスマーケット Photo:Emi Hariyama

クリスマスマーケット Photo:Emi Hariyama

11月15日
『10 times 6』というパフォーマンスを見ました。
日本語で解説すると、『6分ずつ10作品』。
宝くじのLottoファンデーションの資金協力を得てこの公演が可能になりました。
プロジェクトは、公演名の通り、10つのアーティストが6分ずつ作品を発表しました。
場所は、ベルリンでも人気のある公共スペース、ウーファースタジオで行われ、大きなスタジオの3分の1を観客席とし、残りのスペースでアーティストが踊りました。
クラッシック・バレエで参加した人は居ませんでしたが、コンテンポラリー・ダンスからコメディ、モダンダンスまで幅広く、若くこれから活躍しそうなアーティストが集結しました。
リハーサルを重ね構成された作品から、即興作品まで、ソロとデュエット作品など様々な異なったコンセプトの作品を一気に見ることが出来、たいへん面白い公演でした。
ベルリンでは日々、本当に面白いプロジェクトが開催されています。

11月16日
„Künstler gegen Aids - Die Gala 2015" (ドイツ語)
エイズ・ガラを見に行きました。
エイズ・ガラは、ベルリンだけでも年に数回、様々な機関が開催しています。
私は、過去に何回かドイツオペラで行われるエイズ・ガラを見に行きましたが、主にオペラ歌手の歌とオーケストラの演奏によるガラ公演で、クラッシックなコンサートでした。
今回初めてこの催しを見に行きましたが、ドイツオペラで行われるエイズ・ガラとは全く異なった雰囲気でしたが、大いに楽しめました。観客層が全く異なり、見に来た方の服装を見ているだけでも華やかでアーティスティック、まるでファッションショーの様でした。

ガラのプログラムは抜粋すると、
・世界中で活躍中のオペラ歌手"THOMAS QUASTHOFF"による歌
・自転車を使ったアクロバットパフォーマンス
・ポップシンガーによるバンドショー
・女性が軟体を活かしたアクロバティックのパフォーマンス
・声優によるDJショー
・ブロードウェイミュージカル『シカゴ』からハイライト
・マラーホフ氏のスペシャル出演
と、まさに各分野の著名人が集まり、飽きないプログラムですべての人々が楽しめるようなものでした。
『シカゴ』は素晴らしいダンサーが揃っていて、踊りだけでなく、セクシーかつハイセンスなパフォーマンスを見せてくれました。
一部の最後のとり、マラーホフが踊る前に、司会の方が彼のことを紹介すると客席からは大きな拍手が沸き起こり、ベルリン国立バレエ団の芸術監督の座を退いてから一年以上たつ今も、彼の知名度と人気は凄いと言うことを実感しました。

写真撮影中のマラーホフ氏 Photo:Emi Hariyama

写真撮影中のマラーホフ氏 Photo:Emi Hariyama

マラーホフが『瀕死の白鳥』を踊り終えると、観客席はスタンディングオベーション、総立ちになり、ブラボーの嵐となりました。彼の踊りに対してももちろんですが、彼自身に盛大な拍手が送られているような、観客が一体になった瞬間でした。残念ながら、このイベントを第一回からサポートしている元ベルリン市長のクラウス・ボーベライトは今回は不参加でしたが、大いに盛りあがって幕を閉じました。

エイズ・ガラ Photo:Emi Hariyama

エイズ・ガラ Photo:Emi Hariyama

11月19日
バレエ関係では無いのですが、ベルリンで東京フィルハーモニーのコンサートを聞きました。
今回は、バイオリンソロにワジム・レーピンを迎えて、セルゲイ・プロコフィエフのバイオリンコンサート二番、細川俊夫作曲『嵐の後』、ピョートル・チャイコフスキーの四番シンフォニーというプログラムでした。細川俊夫の作品は、情景が目に見えて来るような音楽で、絵を見ているような気分になる素敵な曲でした。
11月の初めにレーピンの演奏を日本でも聞く機会がありましたが、素晴らしい演奏でした。その後ベルリンでも聞く機会があるとは思っていませんでしたが、今回も圧倒的なテクニックで完璧な演奏でした。ベルリンで、日本のオーケストラを聞くという新鮮な一夜でした。

ここからは、日本に帰国中の一コマです。
11月下旬に、マリインスキー・バレエが日本に来日していました。
唯一見に行く機会があり、会場に向かっている時偶然にも、ボストン・バレエ団時代の先生であった、元キーロフバレエのプリマ、タチアナ・テレホワと、サンクトペテルブルクでお世話になった同じく元キーロフバレエのプリマ、リューボフィ・クナコワと遭遇。お二人が来日されていることをまったく知らなかったのでサプライズな再会でした。
テレホワ先生にはボストン・バレエ団時代に本当にお世話になりジャクソン国際コンクールに出場した際にも、バレエ団のリハーサル時間外に指導してくださったりと一生感謝すべき先生の一人です。
その後、更に劇場の中でで、アメリカのインディアナポリスのバレエ団バレエ・インターナショナル時代のディレクター、エルダール・アリーエフに遭遇。こちらも日本にいらっしゃっているとは思いもよらなかったのでサプライズでした。
世界は狭い、そして日本は世界各地からバレエの著名人が集まる中心だということを再確信した一時でした。
私が書くまでもありませんが、初めて見た『愛の伝説』はとても興味深かったです。
この様な作品を現在も見ることが出来るのは本当に素晴らしいことです。最近では、はじめて見る幕物バレエのほとんどは、クラッシック・バレエではないケースが多かったので、古くからある作品を見ることが出来た貴重な機会でした。

12月4日
『オネーギン』をベルリンで見ました。
<キャスト>
オネーギン:フリードマン・フォーゲル
タチアナ:アリシア・アマトリアン
オルガ:クラシーナ・パブロワ
レンスキー:マリアン・ワルター


シラー劇場で『オネーギン』を見ました。シュツットガルト・バレエ団は、日本公演からドイツに帰国したばかりですが、フリードマンとアリシアがゲストで主演しました。
前回見た先月のベルリン国立バレエ団の公演も、シュツットガルトからタチアナ役をゲストで招聘していました。 今回も引き続きゲストカップルを招聘しなければならないほど、ベルリン国立バレエ団のプリンシパル・ダンサーが不足しているようです。

Photo:Emi Hariyama

Photo:Emi Hariyama

フリードマンは数年前にレンスキー役でゲスト出演し、その時の印象が強かったのですが、『オネーギン』は全く違った雰囲気で違った魅力を醸し出していまいた。強さの中にも柔らかさを感じる、そんなオネーギン像を描いていました。アリシアの身体能力は素晴らしく、全てのことを簡単にこなしてしまう、軽やかに3幕まで魅了しましたが、最後のパ・ド・ドゥでは本当に声を出して泣いていて熱演でした。主役が変わると作品自体の印象自体が変わる、いろいろなダンサーが主演するバレエを比較するたびに思うことですが、今回も素晴らしかったです。

速報ー
アレッサンドラ・フェリの復帰公演を見てきました。
ジョン・ノイマイヤーの新作、世界初演『DOSE』です。彼女の素晴らしさは健在でした。
こちらについては改めて、また別にレポートします。

今月は、ラトビア、スウェーデン、エストニアへ公演旅行に行きます。
世界各地で何か起こるかわからない世界情勢ですが、いろいろな経験をして無事帰って来ることが出来るように、細心の注意を払って勉強してきたいと思います。

ワークショップお知らせです。
第一期【12月23から26日】、第二期【1月4日から6日】
一日だけの受講も可能です。クラッシック、ヴァリエーション指導
詳細は以下にお問い合わせ下さい。
お問い合わせmail@eiarts.net

インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi International Arts
針山愛美のバレエワールド

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