今月は、モスクワ国際バレエコンクール、そしてロシアの巨匠の方々のコメントなどお届けしたいと思います。

今月は、先月盛り上がっていたボリショイバレエ団の来日、そしてボリショイバレエ団来日中に、現地モスクワで開催されていたモスクワ国際バレエコンクール、そしてロシアの巨匠の方々のコメントなどお届けしたいと思います。

先日、偶然ウラジーミル・ワシリエフ氏とお会いする機会がありバレエ、クリエーション、その他様々なことについてお話しする機会がありました。
彼は世紀のダンサーとして活躍した後、他方で振り付けや指導をする傍ら、画家としても素晴らしい絵画を描かれています。
ウラジーミル・ワシリエフ氏が審査委員長を務め2年に一度行われているペルミ国際バレエコンクールの開会式の時に、彼が描かれている絵とダンスのコラボレーションの作品を見ました。彼の絵を見ていると、その絵画から創造性やイメージが湧き出てきます。
舞台背景に、彼の描いた絵がプロジェクターで映しだされ舞台セットになり、そのイメージから若い振付家が作品を作ると言うコンセプトでした。

ウラジーミル・ワシリエフと (C)Emi Hariyama(すべて)

ウラジーミル・ワシリエフと
(C)Emi Hariyama(すべて)

最近ではワシリーエフ氏も自身が振付家になり、絵画や歌、音楽とのコラボレーション公演を他方で行っていらっしゃいます。
私自身も、数年前からそのような舞台をクリエーションする機会があり、分野は異なっても、芸術は共通するということを実感していました。
今年の夏もそのような機会があるので今から楽しみです。
ワシリエフ氏、自分自身の感性から、そして魂の中から出てくる感情を表現できるようなダンサーが真の芸術家だと思う、と言うことを語ってくださりました。
実際、踊りにはその人の人生、そして人そのものが現れます。繊細な表現、そして指先の動き1つまでが踊りの1部となりその人の生き様を垣間見ることができます。コンクールなどを見ていても、テクニックだけではなくその数分の踊りから、役柄の解釈や、表現が伝わってくるような踊りを見ることができると本当にすばらしいと思います。
人間の心に伝わるような踊り、そこに到達できるよう私もまた勉強、経験を積めたらと思います。

さて、6月には世界最大、240年の歴史を誇るボリショイ・バレエ団が総勢230名を引き連れ来日しました。初来日から60周年、今回は舞踊監督として最初のシーズンを迎えるマハールベク・ワジーエフ氏がボリショイ・バレエ団の芸術監督として初来日となりました。彼は、マリインスキー劇場やミラノ・スカラ座バレエ団の芸術監督も務め、そのカリスマ性は世界的にも評価を得ています。彼とお話しする機会がありました。
彼は、長年活躍するバレリーナ、ダンサーたちを大切にしつつ、新しい才能も成長させたい。若いダンサーから、既に活躍している熟年ダンサーまでが切磋琢磨して成長していくバレエ団にできれば、とおっしゃっていました。
彼は常に、ダンサーに声をかけ一人一人にできる限り気をかけている、そんな印象を受けました。
そして、新しい才能を常に見出そうとしている、フレッシュなエネルギーを感じることができました。

ボリショイ・バレエ団芸術監督マハールと奥様のチェンチコワ

ボリショイ・バレエ団芸術監督マハールと奥様のチェンチコワ

クラスメイトと

クラスメイトと

ボリショイ・バレエ団で20年以上を踊っている私の元同級生だったダンサー達と再会し話すことがで来ましたが、「マハール氏は常にリハーサルには顔を見せ、熱心に指導し、いつもスタジオで仕事をしている。だから、誰がどうと言う文句があまりなく、芸術監督がしっかりリハーサルを見て決めているのでみんな納得している。そして、今バレエ団はとても落ち着いて良い雰囲気」と語ってくれました。

私が見たのは、『パリの炎』と『白鳥の湖』。
『白鳥の湖』は、原振付:マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ、アレクサンドル・ゴールスキー、改訂振付:ユーリー・グリゴローヴィチ版。
ユーリー・グリゴローヴィチ版の、黒鳥のバリエーションは、コンクールでも踊られるなど有名ですが、3幕のキャラクターダンスを各国の姫が踊る場面などはさすがロシアバレエ。バレリーナたちがしっかり民族キャラクターのスタイルを出しながらしかしクラシックに踊る部分迫力満点でした。

『パリの炎』は、これぞボリショイ。ボリショイのパワーが炸裂する超絶技巧とキャラクターダンスで観客を魅了していました。
アレクサンドル・ベトロフとも再会することができました。彼とは、1997年から1998年までアメリカのバレエ団で一緒に1年働いていて、そのとき彼はまだ現役ダンサーで、一緒に踊らせていただいたり、いろいろ教えていただいたりしました。その後彼はアメリカで数年働いていましたが、数年前からボリショイ・バレエ団のバレエマスターとして働いています。私がボリショイ・バレエ学校に留学していたときにボリショイ劇場でよく、ベトロフのロットバルト、『スパルタカス』など迫力のある踊りを見ていたのを今でも鮮明に覚えています。今の若手のダンサーは、そんな彼からもロシアスタイル、ボリショイスタイルと言うものをしっかり受け継ぎ、迫力満点、しかしクラシックのスタイルをしっかり前に出した踊りを見せていました。

アレクサンドル・ベトロフと

アレクサンドル・ベトロフと

エブゲーニヤと

エブゲーニヤと

さて、『パリの炎』で主演していたエフゲーニヤ・オブラスツォーワですが、終演後すぐに帰国する、と言っていました。その通り、その後すぐに6月11日から20日までモスクワで行われていた、モスクワ国際バレエコンクールの生中継の司会を務めていました。
審査員を務めたのは、今年90歳になられたユーリー・グリゴローヴィチ。
審査員にはスベトラーナ・ザハロワ、現在ボリショイ・バレエ団現役世界的スターのウラジーミル・マラーホフ、ボリショイ・バレエ学校出身世界的スター、ニコライ・チスカリーゼ、元現在ボリショイ・バレエ団、ワガノワバレエ学校校長、マリーナ・レオノバ、ボリショイ・バレエ学校長などボリショイの関係者、そして、インターナショナルな大スターの方々まですごいメンバーが勢ぞろいしました。
私が出演したのは1997年。当時はモスクワのバレエ団で踊っている傍ら、コンクールに参加したことを今のように覚えています。その時は、ニコライ・チスカリーゼ、マリア・アレクサンドロワが金メダル、アリーナ・コジョカルが銀メダルを取った年でした。付き添いの先生はいなくて1人で参加しましたが、コンクールが始まり参加を知ったバレエ団の教師であり名プリマであったマルガリータ・ドロズドーワ先生がリハーサルを見て手伝って下さったり、当時バレエ団で活躍していたプリンシパルの方が衣装を貸してくださったり、本当に色々な方のおかげでファイナルまで行き、特別賞いただくことができました。

モスクワ国際バレエコンクール開会式より

モスクワ国際バレエコンクール開会式より

今回も、いろいろなことを考えながらコンクールを見ていました。
コンクールはもちろん結果が出るものですが、それに向かって一生懸命進むその過程がとても大切だと思います。そしてそのような機会で出会った人とのつながりは私の一生の宝物となっております。
今回も本当に素晴らしいダンサーの皆様で、これからが楽しみな方々ばかりでした。

さて、7月、8月はいろいろ挑戦する機会があります。
またご報告させていただきます。それではまた来月もよろしくお願いいたします。

インタビュー & コラム

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針山 愛美 Emi Hariyama

13 歳でワガノワ・バレエ学校に短期留学、16歳でボリショイ・バレエ学校に3年間留学した後、モスクワ音楽劇場バレエ(ロシア)、エッセン・バレエ(ドイ ツ)、インターナショナルバレエ、サンノゼバレエ、ボストン・バレエ団(アメリカ)、と世界各地のバレエ団に入団し海外で活躍を続ける。
2004年8月からはベルリン国立バレエ団の一員に。

1996年:全日本バレエコンクールシニアの部第2位、パリ国際コンクール銀メダル(金メダル無し)
1997年:モスクワ国際バレエコンクール特別賞
2002年:毎日放送「情熱大陸」出演 、[エスティ ローダー ディファイニング ビューティ アワード]受賞
Emi Hariyama Official Page

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