アフリカ系黒人女性初のプリンシパル・ダンサー、ミスティ・コープランドの10月の引退公演が話題を呼んだアメリカン・バレエ・シアター。今年はアレクセイ・ラトマンスキーによる『くるみ割り人形』をカリフォルニア州オレンジ郡コスタメサのセゲルストロム芸術センターで12月に上演する。

2010年、ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージックで初演され、2014年2月のABT来日公演でも披露されたヴァージョンで、好奇心旺盛なクララと冒険好きな王子が色とりどりのキャラクターが住む砂糖菓子の王国を旅する。最後にパ・ド・ドゥを踊る大人の王女と王子は、クララが想像する未来の自分の姿という設定で、まさに夢のクライマックスとなっている。
1幕の舞台は、クリスマス・イブのシュタールバウム家の台所で、クララとフリッツ、料理人や家政婦たちがパーティ―の準備で忙しく立ち回る場面から始まる。雪の精たちのワルツは最初は静かだが、次第に勢いを増して吹雪になる。ドロッセルマイヤーがそりでクララと王子を救出する。第2幕の花のワルツのソリストは、男性ダンサーたちが花に受粉する蜂たちなのもユニーク。舞台デザインと衣裳は、ミュージカル『ライオンキング』でトニー賞を受賞したリチャード・ハドソン。

12月11日はイザベラ・ボイルストンとジェームズ・ホワイトヘッドのベテランによる主演コンビが初日を飾る。ほかにはキャサリン・ハーリンとコール・ド・バレエのジョゼフ・マーキー Joseph Markey（2018年にジャクソン国際バレエコンクール銅メダルとYAGPタンパ・ファイナルで第1位）、クロエ・ミゼルディンとソリストのジャロド・カーリーJarod Curley（2015年ローザンヌ国際バレエコンクール ファイナリスト）、クリスティーン・シェフチェンコとコール・ド・バレエのマイケル・ド・ラ・ヌエス Michael de la Nuez（2018年YAGPピッツバーグ予選グランプリ）、ベトナム系でフランス出身レア・フレイトゥとジェイク・ロクサンダー（2018年、2019年YAGPグランプリ）のソリスト同士の組が発表された。また、韓国出身のヒ・ソはコリー・スターンズとアン・ジュウォンと2人のプリンシパルと組み、ソリストのパク・スンミもダニエル・カマルゴとカルヴィン・ロイヤル3世を相手に2通りのキャスティングに臨むなど、新進ダンサーたちのお披露目が多く予定されている。今年9月にソリストに昇進した三宅啄未は昨シーズンまでにハーレキンや中国の踊りに配役されてきたが、今後、新たなレパートリーが加わることが期待される。

ABTの『くるみ割り人形』は2015年よりブルックリン音楽アカデミーからカリフォルニア州オレンジ郡コスタメサのセゲルストロム芸術センターで上演されている。オレンジ郡出身の慈善家の名を冠し、2015年に現地のABT系列校として設立されたABTギレスピー・スクールABT Gllespie Schoolの子どもたち44名も出演する。昨年は、両親が日本人でコスタメサ出身で、同校に通うサクラとコタロウのキムラ姉弟も出演。サクラはクララを、コタロウは小ネズミを演じた。