解説:文葉

マイム

(英/mime)

今年の7月は国際バレエ月間なのかしらと思うくらい、華やかな舞台が目白押しでした。スケジューリング、そしてお財布との相談が大変でしたよっ。

やはり、バレエを初めて観る人にとって、基本的なマイムは説明しておかないと難しいのかな。
先日、「バレエ、良いのがあったら観てみたい。『ドン・キホーテ』が良さそうだからそれが観たい」という友達の願いを叶えるべく、アメリカン・バレエ・シアター鑑賞会を企画したのです。当日、お話の大筋は伝えて臨んだにも関わらず、第1幕が終わって感想を尋ねてみると、思惑は大きくはずれ予想外のコメントをいただきました…。観れば分かるだろう、余計なことを言って楽しみを奪ってはいけないなとも思って、本当に最小限のことしか伝えなかったのが諸悪の根元。悪いことをしてしまったなと反省この上なしでした。バレエに浸かっている自分は、マイムの知識もあり筋も理解しているのですものね。皆さんなら初心者の方に何を勧めますか? 

話においてきぼりを食わないために、どんなマイムを覚えておけば困らないのでしょう。簡単なところで言えば、
 

  • 「私」 片方の手のひらを胸に持ってくる
     
  • 「あなた」 手のひらを上にして差し出す
     
  • 「愛している」 心臓を両手で包むように
     
  • 「誓う」 片手は胸へ、片手は人差し指と中指をそろえて天へ差し出す
     
  • 「結婚」 左手を客席へ差し出し、右手で左薬指を指さす
     
  • 「呪う」 こぶしを作った両手を顔の前でクロスし、下へ押しつけるように振り下ろす
     
  • 「No!!」 顔を背けながら相手を突き放すように、手のひらを押し出す。
    ここでは動作を示しただけですが、感情が込められれば動作の速さもニュアンスも演じる人によってもちろん変わります。

    マイムは、パントマイムと言うこともあります。「パントマイム」は古代ギリシャ語の、panto(すべてを)と mimos(模倣する、真似る)が語源となっています。マイムは真似。バレエ学校にはマイムの時間もあります。古典バレエはマイムの演劇的要素と純粋なダンス部分からなり、それを観るのが醍醐味ともいえます。伝統も継承しなければならないバレエ団では、華やかなステップのための筋肉を鍛えるだけでなく、作品の一翼を担うマイムも魅力あるものに洗練させなければなりません。

    一方、ダンスだけを抽出し、感情を分離させた振付まで現代は存在します。同じ人間の身体が機械的に動く。情緒と身体は分離できるものなのですね。

    バレエに限らずパフォーミングアーツとしてのダンスが持つ最大の魅力は、身体が語る。これに尽きるのではないかと思います。そこから観る側の私たちがさまざまに思いを馳せながら、感情を受け取ったり動きの形象に何かを見いだしたり。言語を使わないという制約は、一つの動きに自己を凝縮させることをダンサーに要求し、伝えたい内容をダイレクトに簡単に相手に投げられないからこそ、ダンサーたちは伝えることに余念がないわけで。身体が語るなら、語れるだけの内面の豊かさも必要。人柄・人徳がそのまま出るなら、まっすぐ素直な心(=徳)も必要。身体は、どんな波動を持って存在しているのか。マイムとダンスを突き詰めて考えると、いつもこの問いにぶつかるのです。