シンメトリー(英/symmetry、仏/symetrie)

左右対称のことを指すのだとばかり思っていましたが、三省堂の国語辞典によれば意味はもっと広範囲にわたり、
釣り合いのとれていること、均整。狭義では左右対称のこと。
とありました。

「シンメになって!」などとレッスンで言われることもあるかもしれません。
必ずこう略されるわけではないですけど、群舞では左右対称で見せることが頻繁にありますから、先生方は略しちゃうこともありそうです。左右対称で動いて!というより指示しやすいから。

『白鳥の湖』第二幕を例に挙げれば、上手と下手に別れた白鳥たちが左右対称にポーズを取っているだけでも、目の前に日常とはかけ離れた神秘的な世界が立ち上がってきます。威風堂々とした印象もあります。
バレエの起源を辿ると、騎馬隊が様々な幾何学模様に隊形を変化させる、馬のバレエに行き着きます。宮殿のフランス式庭園を思い起こしても左右対称の図形で彩られています。西洋美術、いえ美術全般を通してシンメトリーであることは美しいと認識されているのではないでしょうか。古代にまで目を向けてみれば、アテネ神殿も左右対称のデザインですし。「美」と同時に、シンメトリーなものを造れるだけの技術力があるぞと、その権力を誇示しているのかなとも想像してしまいますが。

非対称なものは、「アシンメトリー」といいます。最近のファッションでは、わざとスカート丈を互い違いにしたりして、遊び心のあるデザインが多く出回ってますよね。静と動。西洋美術史はこのどちらかを行ったり来たりしてきました。整った顔立ちをたとえて「ギリシャ彫刻のような」という表現を使います。均整のとれた動き、無駄のない秩序だったものは美しいのですが、いつしか時代が流れて動きのあるものが尊ばれるときがきます。彫刻だけを追ってみても、ギリシャで花開いた文化はヘレニズム、ゴシック、ルネサンス芸術、バロック...とその時代時代に特色は違えども、大きくとらえれば、静と動。ギリシャ彫刻のずっと後、ミケランジェロによる有名な『ダヴィデ像』のようにねじれた身体が美しいともてはやされているでしょう?

 

[解説]
文葉

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