解説:文葉

ホリゾント 

(独/Horizont)

 舞台奥一面を埋め尽くす白い幕のこと。もしくは、この幕を利用した照明効果をいいます。「あそこのホリは○○して…」なんて略されることも。この幕の色は下からと上からの光が混じり合って作られます。幕のすぐ前に横一列に配された、床と吊された状態のホリゾントライトのおかげなのです。床設置のものは、だいたい赤・緑・青の3色を1ユニットとして繰り返されます。ちなみに、舞台照明は狙う効果によって電球の種類、本体部分(灯体)が変わってきますが、白熱灯の柔らかい白から青白いものまで白い光です。色を付けるには灯体にカラーフィルム(ゼラ)をはめ込みます。

 大道具と小道具、衣裳、舞台空間に幾重にも重ねられた光のレイヤード。それが大きな空っぽの箱を、例えば天国にも地獄にも、恋人同士が睦み合う部屋にも無機質な光の充満する空間にも変えられる。照明の威力はすごいです。「この色を出したいのに、この照明プランでは無理だ」「ここはこういうシーンだから…」。照明家と美術家は意見がかみ合いにくく、敵同士だとか。見せたい部分へのこだわりがあってのことでしょうが。照明のニュアンスがぼけたせいで、良い美術も殺してしまう。そんなこともあるでしょう。舞台は奥が深い…。光の演出が好きな私は、リアリズムに徹したものでも、イマジネーションをかきたてる抽象的、詩的なものでも、それだけで感動してしまいます。英国ロイヤルバレエ団『ロミオとジュリエット』第3幕、ジュリエットの寝室の少し開いたドアから漏れ入る、舞台上を斜めに貫く一筋の光。悲しい結末を予感させるようで、非常にドラマティックだったんですよ。それはそれは感涙ものでした。