解説:文葉

はける

パフォーミング・アーツの世界では、舞台上(アクティング・スペース)にいた登場人物が出番を終えて袖に引っ込む、もしくは、大道具小道具を袖に片付けることを「はける」といいます。道具などに関しては「わらう」も使われます。
「Aちゃんが上手にはけるのと同時に、Bちゃん下手奥から出てきなさい」
「その椅子を転換中にはけてください」
など、板の上と袖との移動にはけるという言葉が使われるのですね。
三省堂の国語辞典では、捌(は)けるは、
1.[下水などが]よどまないで流れる
2.[商品が]よく売れていく
ちなみに、「捌ける」は、さばけるとも読み、滞り無く処理する、世の中に通じて物わかりが良くなるといった意味にも使われます。

袖にはける。その姿にそれまで舞台上で繰り広げられていた演技の全てが凝結されている。あるいは、踊った後ならどんな気持ちだったのか、十分踊り切れたのか今ひとつだったのか。去り際に何か伝わってくることがあります。まるでそこにスポットライトが当たったかのようにクローズアップされ手見えるものです。
芝居は四倍(しばい)。
「板の上では何でも4倍で行わなければならない」。小劇場で演出家をしている人が教えてくれました。歩いたり、話したり、どの行為も観客に自然に伝えるためには日常生活の4倍の早さ、大きさで行いなさい、ということ。大げさな感情表現、芝居を行え、というのではありませんよ。舞台の上で「普通に」存在するのはなかなか難しく、訓練の賜なのですね。
実はこの「四倍」バナシ、粗の目立ち方にも当てはまると思うのです。
はけるときは袖の数メートル奥まで、気を抜かずに引っ込みなさい!と発表会に出演された方なら誰しも注意された経験がおありかと思います。ふっと気を抜いた瞬間が強調されてお客さんは見えちゃうんですよ。大変ですよね。どうして舞台は細かなことが大きく見えてしまうのでしょう。不思議です。