セリ

漢字は「迫ってくる」の'迫り'と書く、舞台設備のひとつ。舞台や花道の一部分だけを切り取り、上下させる仕掛け。出演者はもちろん舞台装置などを舞台の地下、つまり奈落(前号参照)から登場させたり、舞台から姿を消させることができ、特別な演出効果が狙えます。国立劇場主催の歌舞伎鑑賞教室では、セリの上がり下がりだけで見せる舞台機構のショーが一寸見られるんですよ(笑)。歌舞伎では、1753年(宝暦3)大阪の作者・並木正三が大西の芝居で『傾城天羽衣』に用いてから多く利用されるように。また、歌舞伎の花道の舞台近く、【七三】(しちさん)と呼ばれる場所に作られたセリは特別な呼称があって、その名もスッポン。諸説その名の由来が語られますが、頭から見えてくるところがニョキっとスッポンが頭を出したように見えるからというのが有力などか。妖術師や亡霊などの出現にのみに使用します。ドロドロドロ...効果音とあいまっていかにも妖しげ。同じく、ちょっと非日常的な演出効果を狙うものとして、空を飛ぶものがありますね。空を舞う妖精が登場するバレエのこと、古典作品でもバレリーナを実際に宙に浮かせることはお目にかかりますが、セリを使った演出は...、ない? 私、一度だけ観たことがあります。それは、新国立劇場の『ジゼル』第2幕での、ジゼルの登場シーン。下手にジゼルのお墓がありますよね、その脇からコホウトコヴァがセリ出てきました。

 

[解説]
文葉

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