十八番(じゅうはちばん、おはこ)

レパートリーの中で、もっとも得意とする芸のこと。カラオケで持ち歌を歌う人に「ヨッ!○○さんの十八番!」と声をかけたこと、聞いたこと、ありませんか?  私は熊川哲也さんの華麗なジャンプ技が冴える『ドン・キホーテ』のバジルは、彼の十八番だと思っています。
由来は、歌舞伎の世界にあります。江戸時代は天保3年(1832)、七代目市川團十郎が市川家の得意芸の中から十八の演目を選び、「歌舞妓狂言組十八番」(歌舞伎十八番)と制定したことから、 自らの持ち芸、得意芸が十八番と呼ばれるようになりました。今日でも、歌舞伎十八番は市川團十郎家(市川宗家)の専売特許で、他の家が上演するには、宗家の許可が必要です。 せっかく18あるのに、一部はあまり上演されません。どんな狂言(作品)が選ばれているかというと、いずれも初代、二代目、四代目によって初演されたものの中から選ばれていて、 市川宗家は荒事(あらごと)が家の芸となっています。歌舞伎といったら頭に浮かぶような、幕の最後に主人公が花道を六法(ろっぽう)を踏んで引っ込むところが観られる演目が多いです。 おっとっと、おっとっと、と飛ぶように歩きながら引っ込む、あの姿ですね。この引っ込み、非現実で最も気分が高揚する瞬間ですし、とても人気があります。 「おはこ」とも呼ばれるのは、市川家が「歌舞伎十八番」の台本を箱に入れ秘蔵していたからという説が有力です。

 

[解説]
文葉

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