解説:文葉

後見

(日/kohken)

 三省堂「新明解 国語辞典」によれば、第一義的には「幼少な家長の代理、もしくは補佐をすること。またその人」とあります。あとは、法的用語の説明。三番目に、歌舞伎の云々と触れられています。この言葉は、日本の伝統芸能から派生した言葉です。

クラシックバレエにはまったく出てきませんが、日本発祥の舞台芸術、能、文楽、歌舞伎、日本舞踊などの上演中に舞台上に現れる演者の世話人さんのこと。作品舞台を作り上げる重要なピースなのに、お客さんは見えない者として見ています。舞台上で衣裳を引き抜くお手伝いをしたり、座椅子を絶妙なタイミングで差し出したり、小道具を渡したり受け取ったり。のどを潤すために水分を渡すほか、蝶々の小道具を振り舞踊に参加することさえあります。

舞台上で見ない設定の人たちで有名なのは、黒づくめで出てくる「くろこ」さん。彼らも演者の介添えを行いますが、むしろ舞台上の舞台進行スタッフの印象。舞台上で切られた人の処理をしたり(黒幕で隠しながら袖に連れて行く)、舞台変換を行ったり。文楽では初めの口上を舞台上で行い、有名な人形師さん以外の人形遣いは黒い人たちです。

彼らは黒いほっかむりに着ているものも全て黒い。日本の舞台のルールで「黒」イコール「無」。つまり居ない、見えない設定です。(これが理解できず、海外のお客様は不思議に思われるそうです)

舞台進行のスタッフは普段裏方としてバレエの舞台裏を走り回っています。ところが、舞台進行役の後見やくろこは役者さんがなるものです。役者の影のように「後ろ」に張り付き、舞台進行を滞らせないよう神経を張りつめ演者を「見て」、介添えを行う。裏方スタッフの力も大きいですが、舞台上で行う介添人は演者の間合いを取ることもできなくてはならないし、作品世界を壊さないだけの特別な勘が備わっていなければならないわけですね。くろこ、くろこ…と辞書を引くと黒子と標記されている場合もありますが、実際は黒衣が業界の言葉で、しかも「くろご」と濁ります。そして、黒子の読みは「ほくろ」なんです!