解説:文葉

芸術監督

(英/Artistic Director)

 昨年2002年のバレエ界で大きな話題といえば、02/03シーズンより、貴公子と騒 がれる人気ダンサー、ウラジーミル・マラーホフがベルリン国立歌劇場の芸術監督に 就任したことでしょうか。ダンサーという職業の枠を飛び越えて、彼の鋭い感性が輝く新 境地を心待ちにするバレエ好きや関係者から関心が多いに寄せられ、演出振付、そして主役 のソロルの2足ならぬ、3足のわらじを履いて臨んだ『ラ・バヤデール』(2002.12)で成功 を収めた後もなお、注目され続けています。また、今年はパリ・オペラ座の偉大なダンサー、 芸術監督で振付家の、ルドルフ・ヌレエフ没後10周年で、ヌレエフをたたえる公演が世界中で 行われていますよね。振付家が芸術監督になったり、プリンシパルが就任したり。

  ゲイジュツカントクって何する人? バレエ団の歴史ごとにも、そして演劇畑のものとも仕事が異なってきますが、おおむね「芸術団体をリードするアーティスト兼、その芸術団体の経営の根幹を担うアート・マネージャー」。芸術面だけでなく、経営面でもその団体運営 の指揮官です。例えば、1シーズンの上演演目の決定をしたり、振付演出を手がけたり、配役や作品を委託する振付家を決めたり。そもそも芸術に秀でた人がマネジメント力にも敏腕をふるうというのは、それはそれはすごいことですよね。歴史ある西欧の舞踊団は、伝統を守り後世へ伝えることと、同時代性への挑戦、つまりは保守と革新との狭間で難題にぶつかりながら今の地位を勝ち得ているのでしょう。政治だってバレエ団の運営に大きく響いていきます。ソ連崩壊後、ロシアの社会体制の激変はロシア・バレエを大きく変えてしまいましたし。それを支え新しい道を切り開くのが芸術監督の仕事でもあります。バレエを愛する方法は踊るだけでも鑑賞するだけでもなく、芸術監督という職業のように、バレエを守りまた

  トップ交代が組織の活性化につながることはいつでもどこの世界でも同じこと。現在、芸術監督に関するニュースで大きなものは、ウィリアム・フォーサイスがフランクフルト・バレエ団の芸術監督を04年に辞任すること。あとは、英国ロイヤル・バレエ団のロス・ストレトンがアシュトンの伝統を軽んじたとして短命に終わり、昨年12月からモニカ・メイソンが就任。といったところでしょうか。