解説:文葉

ピケ

(仏/pique)

「突き刺した」の意。英語で言うprickedのこと。膝を伸ばしたまま出した片脚を、床を突き刺すようにポアントまたはドゥミ・ポアントに立つこと。大抵タンジュ(前回参照)やストゥニュ、バットマン・デヴェロッペといった動作がピケの前に入りますね。また、ピケをしたあとはどうなるかというと、第1アラベスクをしたり、アン・ドゥダンにピルエットをしたり。

よく、「ピケを2回して」なんてレッスンで出てくるかもしれません。この場合の「ピケ」は、ピケ・ターン(もしくはピケ・ピルエット pique tour en dedans)の略語です。ピケをした軸足に、後から付いてくる脚はルティレやク・ドゥ・ピエで回るのが一番の基本形で、アテュテュードやアラベスクのポーズで回るのも同じ「ピケ」の仲間です。

ピケの出来は、地に突き刺す胴体をいかに細くコンパクトにできるかにかかってるのかな、と思ったりします。ピケの真髄は浮遊感。電柱が地中に埋め込まれていくよりも、手縫いの針が布に突き刺さる方が繊細かつ軽やかで、それでいて鋭く突き刺さるでしょう? 事実、回転技用にトゥシューズのつま先の面積が狭いものも売っています。が、やはり地面と接触する面積と身体の安定感は比例していて、つま先が狭ければ狭いほど、きっちりピケができていないとぐらついてしまう。

マリー・タリオーニの『ラ・シルフィード』の絵を見たことがありませんか? トゥシューズを履きピケ・アラベスクをして立つ姿。 同作品は1832年初演、彼女の父、フィリッポ・タリオーニ振付でロマンティック・バレエ様式が確立された作品ですが、本物の妖精のように優雅に舞ったと歴史に残る彼女の足元はロマンティック・チュチュの豊かなふくらみの陰に隠れるかのように、か細く小さく描かれています。非常に華奢だった彼女の体型に憧れてダイエットする女性も続出だったとか。ロマンティック・バレエのヒロインは男性の憧れを象徴的に描いたものと言われますが、女性も幻想的な妖精という存在に憧れたのでしょうか。それとも、単に男性の気を引きたかっただけ…? まぁ、「美」に憧れるのに老若男女関係ありませんよね。