解説:文葉

タンジュ 

(仏/tendu)

正式名称は、バットマン・タンジュ(仏/battement tendu)。バットマンは英語でいうところのbeating。打つ。今回のタンジュのほか、バットマン・デガジェや、バットマン・フラッペ、バットマン・フォンデュ、バットマン・デヴェロペ、グラン・バットマンと、1番ないしは5番ポジションから片足を前、横、後ろと外側へ足を差し出す動作がほとんどで、グランは空中に振り上げるのとは逆に、プティ・バットマンという、軸足をもう一方のつま先で打つ動作もあります。

タンジュは「張った」という意味。動きは、まず両脚にかかっていた体重を軸足だけにシフトすると同時に、片足をひざを曲げずにぴんと張ったまま、前方なら踵から押し出すように、横方向ならひざの方向に、後方デリエールならつま先から、つま先が床から離れないぎりぎりのところまで滑らせて行きます。注意しなければならないのは、必ず両脚をアン・ドゥ・オールしながら行い、足が止まっても外へ動かそうという意識は止めてはいけません。つまり、土踏まずはしっかりと引き上げ、ひざの裏側を身体前にねじり出すようにし、脚全体がスパイラルしながらもっともっと伸びていくようなイメージを持つ。足の付け根と踵・つま先が両端から引っ張られるような感じとでもいいますか。

バーレッスンは、まず初めにプリエ、次はタンジュへと進んでいくことでしょう。2月に解説した「プリエ」は動きの潤滑油、体内の重心バランス感覚に作用する基本の動作でした。今月は、「タンジュ」。私は、このタンジュを「バレエの出汁」と説く。その心は。

お出汁とは、その店・家の味を決めるもの。お出汁が前面に出ただし巻き卵やら、煮物、お吸い物、おうどんはもちろん、隠し味に使われるような和え物でさえ、いかに繊細にだしを取ったかがお料理の出来を左右するという恐ろしさ。だしの良し悪しで舌が悦びもすればしびれもする。

  一見単純な動きでも精密にマスターしなければ、「バレエらしさ」は手中に収められません。デガジェやグラン・バットマンはタンジュの延長で空中(アン・レール)に上げたものですし、グリッサードという動きもタンジュを通過しています。タンジュは何となくできてると思うけど、後が上手く行かないとお嘆きなら、タンジュを見直しましょう。土台がしっかりしていなければ、上に幾ら積み重ねても崩れてしまうだけですよね。アン・ドゥ・オールを鍛えるのにもタンジュは最適ですから。タンジュはすべてのパpasに通じ、バレエの肝である優美さこそアン・ドゥ・オールされた脚全体の筋肉が生み出す芸術。タンジュの出来不出来で芸術は奥深くもなり、陳腐にもなる…。

  バランシンも、「難しいアンシェヌマンをやるよりもタンジュを何十回、何百回と繰り返す方がよっぽど良いのだ」と言ったそうです。