拍手(日/はくしゅ)・スタンディング・オベーション(英/standing ovation)

劇場やホールで、音楽、バレエやダンス、オペラ、演劇などのパフォーマンス終演時やカーテンコール、超絶技巧に感動したとき、どうされますか? 両手を叩く。客席に座っていられず立ち上がって拍手する。「ブラボー!」の嵐かも。

拍手やスタンディング・オベーションは、言語の壁を超えて、パフォーマーに賞賛・賛意・歓迎・歓喜・感激・感謝といった感情を素直に伝えられる唯一の世界共通言語だと思うのです。感動して、敬意をこめて、「ありがとう」「あなたは素晴らしい!」と伝える。スタンディング・オベーションはシャイな日本人にはない風習でしたけど、ここ最近は見られることも。後ろの人を考えるとなかなか立ちづらいですけど。 拍手はごくごく普通の習慣と思っていましたが、昔はお能や狂言、歌舞伎で拍手は起こらなかったとか。江戸時代までの日本では、観劇の際、音を立てることを作法に反するという考えで控えられていたそうで。確かに。お能や狂言では、静かに、一人ひとり舞台から橋掛りを渡って揚幕に引き上げていく様には、拍手をするタイミングがない。私が見たときは控えめに拍手が送られていましたが。それが西洋文化の渡来で、「マナーである」と認識されてから拍手が当たり前になってきたと。敬意を表すために手を叩く行為は、神への祈りをささげる「かしわで(拍手・柏手)」があって、それは古く、身分の上の人に向けて行われていると3世紀の日本を伝える『魏志倭人伝』にあるそうです。日本と西洋と同じ手を叩く行為でも意味が少し違うなんておもしろいですね。
スタンディング・オベーションの始まりは、1743年ロンドン、ヘンデルのオラトリオ「メサイア」のハレルヤ・コーラスに感動したら時の国王ジョージ2世が立ち上がって拍手を送ったことがきっかけで、周りの聴衆も同じように立ち上がり賞賛したことが起こりなのだそう。
立とうが立つまいがどちらにしても、私は自分の好きでいいと思います。拍手も立ち上がることもできないほど衝撃を受けて、余韻に浸って身動きできなくなってしまうこともありますもの。骨抜きになっている自分の周りが拍手喝さいで劇場を満たすとき、感動や空間を共有していることにさらに嬉しくなったりして。

 

[解説]
文葉

ページの先頭へ戻る