解説:文葉

エシャッペ

(仏/echappe )

「逃げた」という意味のパで、基本動作は5番に閉じた足を2番もしくは4番ポジションに一気に等間隔に開くもの。たとえば目の前から自分に小動物が突進してきたとして、パッと脚を開きくぐらせて当たらないようによける。そんなイメージです。

 このエシャッペ、大きく2種類あります。一つは跳躍しながら行う「エシャッペ・ソテ échappé sauté」、もう一つは飛ばない「エシャッペ・シュル・レ・ポワント échappé sur les pointes」。エシャッペ・ソテはトランポリンを使っているかの如くポーンポーンと、飛んでは下りまた飛び上がる動きです。5番から真上に飛び上がって両足を2番・4番に開いてドゥミ・プリエしながら下りる。プリエでエネルギーを蓄積させ2番・4番から飛び上がって5番に戻るか他の動きへ。5番に戻るときは最初とは逆の足が前になります。足を開いたときはかかとで床を押し、プリエを忘れずに。
シュル・レ・ポワントのほうは5番でドゥミ・プリエをしてアン・ドゥオールを怠らず両つま先は床を滑らせ足を開く、そして、2番・4番のポジションがポワント、もしくはドゥミ・ポワントになっている状態になります。

 罠が多いのはシュル・レ・ポワントの方です。開くこと自体は簡単でも「一気に」アン・ドゥオールのまま甲も膝の後ろも、脚全体を伸ばしきるのは意外と難しい。横に滑らすエネルギーと脚を引き上げるエネルギーとがおなかから下で取っ組みあいしてる、そんな感じです。でもどちらも負けてはダメで、どっちもが良い状態を目指す。さらに大きなハードルなのがポワントで行う場合です。なぜか。飛んではいけないのに、ポワントに乗ろうとして勢いで飛んでしまうことが多いから問題なのです! 勢いをつけようとすると飛んでしまう、飛ばないように引き上げるだけにしてしまっては脚が大きく開かない。悩ましい状況です。スローモーションで一度してみたらわかるでしょう。ポワントに乗るには「ドゥミ・ポワントを通ってポワントにしていく」ことが必要で、そのためには脚全体を伸ばしきってから更に(!)膝の後ろも足首も甲も伸ばして伸ばして伸ばして、自分の重力を引き上げて引き上げて引き上げなくてはダメ。脚を開くたびに悩む、後悔するという方への処方箋は「とにかく正しい方法で何回も行う」しかないと思うのです…。あとは、バーにつかまってドゥミからポワントへの動作を繰り返して足裏と足指の筋肉を鍛えましょう。

『ドン・キホーテ』の「キトリのバリエーション」で一見簡単そうなエシャッペ。遊びがあって小粋で大好きな振付ですが、脚が伸びきっていないと映えず、自分は「これだけ引き上げられるのよ」と証明して見せるようなもの。エシャッペ・シュル・レ・ポワントはまさにポワントワークの試金石ですね。がんばりましょう。