解説:文葉

アロンジェ(仏/ allongé)

「引き伸ばされた、長くした」という意味を名前に持つ動き。縮こまっていたもの、曲がっていたもの、丸まっていたものを伸ばす、もしくは伸びているものをさらに伸ばすという状態の変化。アロンジェによって静止の均衡が破られるのですが、アロンジェは全く悪者なんかじゃ無くって、観る人々を優しい気持ちにさせたりドラマを感じたり、何か良い気分になる媚薬のような力を持っている。観る側に立っても踊る側に立ってもそう思います。「伸びをすると気持ちがいい」という原理で、身体が解放されると心も解放され、高台に登って広々と素敵な眺めを独り占めにしているような、何かが違うんです。

どこを伸ばすか。アロンジェのひとつは脚で表現されます。例えばアティチュード・アロンジェ。アティチュードのポーズをしておいてアラベスクになるよう膝を伸ばしていきます。ぱっぱと伸ばしてしまうのではなく、抵抗する空気を押すように。アラベスク・アロンジェは、アラベスクした軸足のドゥミ・プリエによって、上げている動足は根本のお腹、身体の中心からぐーんと伸ばされていく。『ラ・バヤデール』の影の王国の始まりは、コール・ドゥ・バレエのアラベスク・アロンジェとタンジュの連鎖で彩られていますね。厳かで非現実的な空気が流れていきます。

アロンジェのもう一つは腕・手。ドガの有名な踊り子の絵画の中で、バレリーナは画面右側、舞台上でアロンジェをして見せています。通常のポール・ドゥ・ブラは手のひらが身体の中心に向いていて、腕は、地球儀を抱えるとか木の幹に抱きついたような、ふっくらとした丸みを保って肘も柔らかく曲がっていますが、それを伸ばすのです。ポール・ドゥ・ブラ1番(アン・バ)にはさすがに無いのですが、それ以外は、そっと、あたりの空気を手の甲で押しのけるように手を翻し、手のひらを身体の外側や下へ向け、肘を伸ばします。ふんわりと、柔らかく。身体の前に抱えていた空気の球体はどこかへ行ってしまいます。上半身全体も、アロンジェに合わせて動きます。伸ばす前は縮こまっているのを強調するように一度丸くなるとか。あくまでなめらかに、アロンジェと連動するのです。

脚も腕も伸びるアロンジェは美しいですが、概して美しく見えるものには苦痛が伴う…、逆にいえば、辛くないとまだまだ美しく見てもらえないのかも…。美しく見える腕の形や上半身の使い方、脚の伸ばし方など、甲のラインなど…誰よりも美しく輝くために、アロンジェは磨き甲斐のある動きですよね。