森 瑠依子

バレエの栄光の歴史がきらめく
「薄井憲二バレエ・コレクション」の逸品を訪ねて その7

<白鳥の湖 3 >
2回にわたって、薄井憲二バレエ・コレクションから『白鳥の湖』にちなむ品々を紹介してきたが、今回が『白鳥の湖』の最終回。20世紀後半に活躍したスターたちの写真と、切手、プログラムなどを取り上げる。

1.20世紀後半のスターたち

「黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ」を踊るアリシア・アロンソ(1921-)とイーゴリ・ユスケーヴィチ(1912-1994)

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アロンソはキューバの国民的大スターのバレリーナで、1940年代からバレエ・シアター(現アメリカン・バレエ・シアター=ABT)で活躍。長年にわたりユスケーヴィチとの名コンビで『ジゼル』「黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ」、『テーマとヴァリエーション』(初演)などで高く評価された。キューバ国立バレエの創立者で、1990年代まで現役を続けている。
ユスケーヴィチはウクライナ出身。器械体操でオリンピックに出場した後、20歳とたいへん遅い年齢でバレエを始めたが、理想的なダンスール・ノーブルとして活躍し、多くの男性舞踊手に影響を与えた。バレエ・リュス・ド・モンテカルロとその周辺団体、バレエ・シアターなど数々のバレエ団で踊り『ジゼル』『ドン・キホーテ』、バランシン振付『アポロ』などが代表作。

ABTで『白鳥の湖』を踊るナターリヤ・マカロワ(1940-)とミハイル・バリシニコフ(1948-)
(PH-C-02-75 © MIRA)

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ともにレニングラード・キーロフ・バレエ(現マリインスキー・バレエ)で地位を確立した後、1970年代に西側に亡命し、世界的な大スターとしてバレエ界にとどまらない活躍で名を成した。マカロワはABTと英国ロイヤル・バレエを中心に活動し『ジゼル』『白鳥の湖』などの古典のみならず、ミュージカルの『オン・ユア・トウズ』でも絶賛された。また改訂振付を行った『ラ・バヤデール』はABTやロイヤル・バレエなどのレパートリーに定着している。
バリシニコフは20世紀で最高の男性舞踊手のひとりで、ABTを中心に古典、ジェローム・ロビンズやアルヴィン・エイリー、トワイラ・サープらのモダン作品まで多彩なレパートリーで活躍。ABTの芸術監督を務めた後にホワイト・オーク・ダンス・プロジェクトを結成してコンテンポラリーダンスで活動している。また映画『愛と喝采の日々』『ホワイト・ナイツ』『ダンサー』や人気テレビドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』への出演でも注目を浴びた。

ボストン・バレエで『白鳥の湖』を踊るニーナ・アナニアシヴィリ(1963-)とフェルナンド・ブホネス(1955-2005)
(PH-D-008 ©Jaye R. Phillips)

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1990年に史上初のアメリカ=ソ連共同制作版として上演された『白鳥の湖』の舞台写真。アナニアシヴィリはジョージア出身で、ボリショイ・バレエで世界的なスターとなり、日本でも絶大な人気を誇っている。1988年にソ連のダンサーとして初めてニューヨーク・シティ・バレエに客演し、1993年から2009年までABTのプリンシパルとしても活躍した。現在は母国ジョージアの国立バレエ団で芸術監督を務めている。
ブホネスはキューバ人の両親のもとにマイアミで生まれ、1972年にABTに入団。抜群の華やかなテクニックと気品に恵まれた世界最高の男性スターのひとりとして、30年にわたって世界中で活躍したが、50歳の若さで病死した。


2. 切手

「オデットと王子」
(ST-BL-12-2)

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1961年にソ連で発行。白鳥の女王オデットとジークフリート王子が湖畔で出会った場面が描かれている。民話風の王子の衣装は、現代では見かけない古風なデザインだ。

ナターリヤ・ベスメルトノワ(1941-2008)とミハイル・ラヴロフスキー(1941-)
(ST-BL-73-5)

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1990年代にタンザニアで発行された「ロシア・バレエ」シリーズの1枚。ベスメルトノワは1960年代から30年にわたってボリショイ・バレエの看板スターとして活躍し、古典と夫ユーリー・グリゴローヴィチ振付の『愛の伝説』『スパルタクス』『イワン雷帝』などの物語バレエでヒロインを演じた。ラヴロフスキーはベスメルトノワ、リュドミーラ・セメニヤカらのパートナーとして1988年まで活躍。故郷のトビリシでもダンサー、振付家、芸術監督を務めている。

インターナショナル・ダンス『白鳥の湖』

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今年3月に国連が発行した6枚組切手シート「世界のダンス」の中の1枚。美しい青が印象的だ。


3. プログラムとパンフレット

リュドミーラ・セメニヤカ『白鳥の湖』プログラム
(PR-666-HP)

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(左)表紙、(右)2〜3ページ
セメニヤカの舞台デビュー20周年を記念して1990年の3月5日にモスクワ、ボリショイ劇場で行われた、アレクサンドル・ヴェトロフと共演したグリゴローヴィチ版『白鳥の湖』のプログラム。セメニヤカは1970年にキーロフ・バレエ(現マリインスキー・バレエ)に入団し、1972年にプリンシパルとしてボリショイ・バレエに移籍。トップ・スターとして主要レパートリーの数々に主演し、日本も含め国内外で高い支持を受けた。現在はボリショイ・バレエで指導にあたっている。

モスクワ・クラシック・バレエ公演パンフレット
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(左)表紙、(右)裏面
ウラジーミル・マラーホフ(1968-)とイルギス・ガリムーリン(1964-)が所属していたモスクワ・クラシック・バレエの1988年ロンドン公演用パンフレット。王子を演じる当時20歳のマラーホフの写真も掲載されている。
マラーホフはウクライナ出身で、モスクワ・クラシック・バレエで活躍した後、ウィーン国立バレエ団やABTで踊り、ベルリン国立バレエで長く芸術監督を務めた。また日本では東京バレエ団のアーティスティック・アドバイザーも務めた。ガリムーリンはテクニシャンとして知られ、牧阿佐美バレヱ団、新国立劇場バレエ団で『ドン・キホーテ』『椿姫』に出演するなど日本とのかかわりが深く、現在新国立劇場バレエ団のバレエ教師を務めている。


4. 楽譜

オディールのヴァリエーションの楽譜
(SC-38)

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(上左)表紙、(上右)振付説明、(下)振付説明と譜面
1989年にモスクワで出版された古典バレエのヴァリエーションのピアノ伴奏用楽譜集より、グリゴローヴィチ振付『白鳥の湖』第2幕「黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ」のオディールのヴァリエーションの楽譜。ダンサーの写真入りで、振付も詳しく記載されている。表紙は1976年にボリショイ・バレエに入団し、オデット/オディール、ジゼルなどを当たり役としたアッラ・ミハリチェンコ(1957-)。

写真提供:兵庫県立芸術文化センター 薄井憲二バレエ・コレクション