【第61回】より大きく踊るために〜左右の感覚〜

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

普段クラスを教えている中で生徒のみなさんから寄せられる質問をヒントに、どうやったらうまく身体を使えるのか、どうしたら使い方をイメージできるのか、現役ダンサーの藤野先生ならではの視点で解説します。

人は自分の体のコンディションを考える上で「左右差」というものを気にします。そしてその左右差が大きいと「バランスが悪い」「良くないこと」と捉えるでしょう。けれど体中が左右対称に作られていて、その中で左右が完璧に同じものなんて、何一つ無いのです。
今回は「左右対称のものを生かして動く」というお話です。

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どう感じているかを意識する

例えば「目の形や大きさ」は右と左とで絶対に違うはずです。
けれどそれがどの様に違うか?なんて、鏡を見るか写真を見るかでもしなければ、知りもしないはずでしょう。そしてその違いをどうすれば全く同じものにできるか?と悩み続けるよりも「右目で見る感覚と左目で見る感覚」は全然違うもの。違う世界観ということを再認識してみましょう。

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左右の高低差を作る

左右のものを均一に。均等にしようと試みること自体が「最も難しいこと」として考えてみると、どうせ非対称的なものであるならば、左右差、特に「左右の高低差」を自ら感じて、作ってしまいましょう。
例えば「右目の方が左目より大きく上に在る」という状態にすると、顔は大きく「左に傾いている」はずです。

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これを体の他の部位で試してみましょう。
左右の肩甲骨で高低差を極端に出せば、肩のライン、肋骨に大きな傾きが生じて、よりしっかりとしたエポールマンが作れます。
お尻を左右の二つの骨盤のパーツ(腸骨)に分けて感じて、同じように高低差を作ると、よりしっかりとした軸脚の役割と、さらに上げやすくなる上げ脚を感じられるはずですよね。

肩の高低あるない.jpg

骨盤の高低あるない.jpg

エネルギーの流れ

肩やお尻の左右の高低差がはっきりと感じられたのならば、次は「どちらからどちらへ?」エネルギーが流れているのか想像してみましょう。ここでの「エネルギーの流れ」とは、元々そこに在るものではなく、自らの「想像で生み出すもの」として考えてみましょう。
見上げるパターンの時はもちろん、肩もお尻も「下から上のものへ」とエネルギーを流すことで「昇っていく感覚」を得られるはず。まさに「引き上げ」の為に作り出したい流れですね。
また、見下ろすパターンも単純に「上から下へ落とす」というだけではなく「優しく見渡す」「景色が広がっていく」などの違った表現の方法として作り出してみましょう。

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Check
>>> 【第61回】肩とお尻のサイドロッキング - エクササイズ-

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。
●藤野富村バレエアート代表
https://www.fujinotomimuraballet.com

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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