【第57回】均等リンバリング - エクササイズ-

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

普段クラスを教えている中で生徒のみなさんから寄せられる質問をヒントに、どうやったらうまく身体を使えるのか、どうしたら使い方をイメージできるのか、現役ダンサーの藤野先生ならではの視点で解説します。

リンバリングとは、バーに脚を乗せてストレッチしたりする様を示しているようですが、実際のところ「割と高いバーに脚を乗せること」が第一関門になっている人も多いようです。スタジオのバーは大体が腰より高い位置に設定されていますが、脚が高く上がっていなくても「両脚を使う意識」を持って出来るエクササイズをご紹介します。

高すぎるバー.jpg

腰より低いリンバリング

タンジュのように地面向きに伸ばす足は結構いい感じなのに、アラセゴンで90度近く脚を上げると「つま先を伸ばして!」と注意されることが多くなる気がしませんか?

脚の表側と裏側の長さを比較して考えてみると、理解しやすいかもしれません。
腰より低いアングルに伸ばす脚は、斜面を下る方向なので、脚の付け根からつま先へ伸ばし出す感覚が入りやすいのに対して、脚を上昇させると引っ張る力が強くなってしまう。その脚が腰より高い90度以上のアングルを出すと、前ももの強い引きに負けない程の、裏ももの伸びが足りなければ、足裏を押し出す力を失ってしまい、つま先まで伸びない「足の緩み」が生じてしまいます。
この説明を聞いてもよく分からないと思いますので、イラストを確認してください。

脚のアングルと表裏の伸び縮み.jpg

バーより全然低い、足を乗せることができる台を用意しましょう。片方の足を台の上に。もう片方は地面に、段違いで立っている状態にします。姿勢を起こし、両脚でプリエをしてみましょう。それぞれの足に掛かる体重を均等に。プリエでの膝の曲げ伸ばしの感覚を左右均等に行ってみましょう。

段違いプリエ.jpg

このエクササイズの目的は「左右それぞれの脚の条件は違っても、両方の脚をそれぞれにちゃんと使っている」という感覚を得ることです。
今度は台上の脚を、つま先も膝も伸ばした状態で、軸脚だけでプリエしてみましょう。台の上の足ゆびが無意識にグーとかパーとかに暴れないように。安定したつま先の伸びをキープして、行ってみましょう。

伸ばしたプリエと台上の足の変化.jpg

手も足も、何も掴むものがなければ、何かを掴もうとしてグーになるような力が入ってしまうことがあります。これが原因となって、肩や股関節に固まる力が生じて、コントロールを失ってしまいます。
手や足が「何かに触れる感覚」を探すよりも「手や足そのものの感覚や状態」をしっかりと意識できれば、体は素直に動いてくれると思いますよ。

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バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。
●藤野富村バレエアート代表
https://www.fujinotomimuraballet.com

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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