【第59回】脚を長く、高く

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

普段クラスを教えている中で生徒のみなさんから寄せられる質問をヒントに、どうやったらうまく身体を使えるのか、どうしたら使い方をイメージできるのか、現役ダンサーの藤野先生ならではの視点で解説します。

脚はできるだけ長くしたい。できるだけ高く上がるようにしたい。誰もが「長い、高い」方を望むはず。 「広がる、広がらない」という言葉を聞いて、どちらがより大きな動きや伸びを与える印象を受けますか?
今回は「脚をどこから使えば長く、高くなるか?」というお話です。

股関節の境界線はどこか?

2番ポジションやアラセゴンなど、脚を開いた形で、右脚と左脚の境界線ってどこでしょう?通常のズボンを履いて、脚を開いて立ったとき、股上の縫い目を堺に生地が分かれるでしょう。そこから右のものは右。左のものは左。と言い切ってしまうなら、2番ポジションで股下にできた「三角形の頂点」は、鋭い角の形?でしょうか。

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股関節は、根っこの大腿骨頭が割と近い位置に隣接していますが、それでも間に骨盤を挟んだテーブル形をしていて、台形と考えられますね。先程の股上が鋭角のイメージだと、左右の脚に与えている動きは「蝶番の動き」となり、互いの脚の動きが引っ張り合ってしまい、脚幅も上手に広げにくくなります。 しかし、股関節ー骨盤ー股関節の三節のパズルで考えると、動きのバラエティは増えると思いませんか?

付け根から動かす

では脚を差し出したり、持ち上げたりするのは、どこからスタートすればよいのでしょうか?

長いアラセゴン.jpg

短いアラセゴン.jpg

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高く脚を上げようと思うのならば、まず「骨盤は真っ直ぐではいられない」と考えなくてはなりません。 上げ脚、出し脚の股関節から力が掛かると、上げ脚の重み→骨盤の重み→軸脚が受け持つ、という「重さを釣り上げる」負荷が大きくなります。 反対に、軸脚の股関節から骨盤を「押し上げる」ようにすればどうでしょう?上げ脚が耳の横まで上がるための「骨盤の傾き」を先に作ってしまえば、あとはしっかり伸ばすだけ。脚を上げる作業の半分は、骨盤の傾きによって完了していると言えますね。

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京子の脚を押し上げる.jpg

アラベスクはどのように?

股関節はその形状から、後方に脚を上げるための可動域にかなりの制限があります。骨盤をできるだけ真っ直ぐに立てようという思いは、かえって脚が上げにくくなりますので、どちらかというと「どのように骨盤を傾けたら脚が上がりやすくなるか?」を考えなくてはなりません。

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先程の説明のように、軸脚の股関節から骨盤の傾きを誘導します。アラベスクの伸びと張りが一番安定する角度は、床に水平。軸脚と90度のラインをまずは目指して。股関節ふたつと骨盤の関係を数学的に考えると、骨盤の前傾は「45度」が一番安定するでしょう。
アラベスク脚からグイと引き上げると、腰椎や仙骨は引っ張り下げられてしまいます。ピケからアラベスクで立つ前に「軸脚と骨盤の前傾45度」をしっかりイメージして。腹筋と背筋で仙骨を誘導するように試してみましょう。

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二人でキレイなアラベスク.jpg

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バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。
●藤野富村バレエアート代表
https://www.fujinotomimuraballet.com

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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