【第52回】伸びしろを上手に~付け根からの意識~

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

普段クラスを教えている中で生徒のみなさんから寄せられる質問をヒントに、どうやったらうまく身体を使えるのか、どうしたら使い方をイメージできるのか、現役ダンサーの藤野先生ならではの視点で解説します。

正面から見た骨盤.png

正面から見た骨盤と股関節です。
このイラストを見て、自分の脚を動かす時。
例えばアンデオールに股関節を外旋させるとき、どの辺りを使っているか?力の入りどころを赤く塗ってみてください。

Aの外側とBの内側.png

そうしようと思っていなくても、Aの股関節の外側にギュッと力を感じたのではないでしょうか?
Bのエリアは股関節の内側、大腿骨頭(だいたいこっとう)と寛骨臼(かんこつきゅう)の接合部の辺りです。
位置としては骨盤底筋群や、坐骨から裏ももへと繋がる筋肉がたくさん入っているところです。

今回は、腕脚をよりしなやかに、伸びやかに動かすための、付け根の開き方のお話になります。

伸びやかなバレリーナ.png

形は違えど流れは同じ

ここからは腕と脚を同時進行でお話します。
股関節は上のイラストで見るように、大腿骨の丸い頭が骨盤の丸いくぼみに収まって、クルクル回るように動かせるボールジョイント。肩の関節はイメージのはっきりしない人が多いと思いますが、実は股関節と似たように、腕の骨の頂上の丸みが、肩甲骨の端の「受け皿」の上でスルスル自由に動ける形をしています。

股関節と肩関節内外の流れ.png

話が変わりますが、皆さんは着ている衣服に入る「シワ」について、どう思われますか?特に腕や脚の付け根の周りのシワについてはどうでしょう?
腕も脚もキュッと締めて直立すると、脇と股の下には強いシワが入ります。
体の至る所にある「シワ」とは、皮膚の表面積に余裕のある部分。すなわち「動きの伸びしろ」がある場所であって、シワをきつく入れることは「閉め、引き、縮み」を促し、シワを直そうとすることは「開き、押し、伸び」の意識となります。

股のシワの強弱.jpg

肩股周りの境界線.jpg

折り込みを引き出す

例えば肩と股のボールジョイントに「折り込み部分」が挟み込まれているとしましょう。

肩と股関節の折り込み.jpg

どちらの関節も外側、上側から巻き上げる、或いは引き込むように持ち上げると、折り込み部はより食い込まれ、シワを入れる方に動いてしまい、力を強くすればするほど、腕脚を付け根へと引き込んでしまいます。
肩関節の下=脇と、股関節の下=股下からの動きは、腕と脚の内側、裏側の流れに直結します。
折り込み部分からの動きが、脚全体、腕全体のリードとなるよう、滑らかな「シワ伸ばし」を行ってみてください。

上からと下からの違い.jpg

裏側の虹ライン.jpg

バレエではすべての動きの中で「どちらが軸で、どちらが動き側?」とこだわってしまうところがありますが、今回の「付け根からの動き」は主に、軸脚の付け根に対して感じるときに、軸を支えて起こし、さらにしっかりとした引き上げに繋がっていくはずです。
ちなみに僕が思うところ、こと股関節に関しては、全ての動きの中で「どちらもが軸で、どちらもが動くもの」と言えます。
まずはしっかり感じて、伸ばして、動かして。さらに上のステップを目指していきましょう。

軸脚としての上げ落ち.jpg

Check
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バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

fujino.jpg

[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。
●藤野富村バレエアート代表
https://www.fujinotomimuraballet.com

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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