【第56回】肝心要の腹筋よ

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

普段クラスを教えている中で生徒のみなさんから寄せられる質問をヒントに、どうやったらうまく身体を使えるのか、どうしたら使い方をイメージできるのか、現役ダンサーの藤野先生ならではの視点で解説します。

「腹筋」と聞くと、鍛えなくてはならない、ちゃんと使わなくてはならない部分。という印象を持つ人が多いのではないでしょうか?人は皆、生まれながらに腹筋をちゃんと備えていて、普段の生活習慣の中で「要(かなめ)となる力」として、必ず使っています。

今回は「自分の腹筋をよく理解して、どのように使うか?」を考えてみましょう。

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腹筋の役割

「腹筋が弱いから、腹筋を鍛えなさい」と先生に言われ、いざ自分のお腹と向き合ってみて、最初に気になってしまうのは「ブヨっとダラっとした弱そうな」表面的な外見。
奥の腹筋がしっかりしていなければ、確かに表面も弱そうに見えるのは付きものでしょう。しかし逆にバキバキに腹が割れてムキムキの筋肉が、決して「強い腹筋」には成り得ません。

そもそも腹筋の役割は「体の幹となって、体全体の状態と動きを支えること」であり、例えば陸上競技のハンマー投げをするとして、振り回すハンマーに自分がふっ飛ばされないようにコントロールできるのが「強い腹筋=体幹」と言えます。

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どこで?何をしているのか?

人は「顔を向けているところに意識を向けている」と言えるように、腹筋だって「次に何をするか予測している状態」でなければ、次の動きに対応できるはずがありません。まずは腹筋がどこを向いて、何をしようとしているのかを考えてみましょう。
顔で考えてみると前、横、後ろの方向感覚が分かるように、腹部にとって何が前で、横で、後ろなのかを確認してみましょう。

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単純におへそが前で、背骨が後ろ、でも良いのですが、それだと外観しか捉えられず、内部の動きが自覚できないグレーゾーンになってしまいます。
お腹の奥で腰椎を感じてみましょう。初めは漠然としたイメージを持って、何が前で?横なのか?など、よく想像してみましょう。
イメージがしっかりしてくると、腹筋の奥のどこを意識して、何をしようとしているのか感じられるようになるはずです。

腹方向を気にしているしていない.jpg

結論。正しさは自分の中にある

バレエには様々な動きやポジションがあり、それぞれに正しい形や入れるべき力はあるのでしょう。しかしそれ以前に「そうしようと思っている気持ち」がお腹にはっきりと入っていなければ、その踊りには「今、何をやっているのか、よく分かっていない」というお顔とお腹が、見ている人に伝わってしまいます。
逆に言えば、自分のお腹がどんな状態で、何をしたいのかがはっきりと見えてくれば、それはもう「自分の意志の入った踊り」になるでしょう。

人はみんな日常の中で、見ている(目で)ものに囚われすぎて、体でやろうとしている(お腹が)ことに無意識でいることが多くなっていると思います。

時に立ち止まって、自分がどこを向いて?何に向かっていくのか?お腹とよく相談して、感じてみることをお勧めします。

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バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。
●藤野富村バレエアート代表
https://www.fujinotomimuraballet.com

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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