【第58回】押す力コントロールトレーニング - エクササイズ-

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

普段クラスを教えている中で生徒のみなさんから寄せられる質問をヒントに、どうやったらうまく身体を使えるのか、どうしたら使い方をイメージできるのか、現役ダンサーの藤野先生ならではの視点で解説します。

力を思ったとおりにコントロールできる、というのはとても聞こえのいいものですね。 力をコントロールするって、一体どういうことなのでしょう?
まず第一に、目標を達成できる力がちゃんと入ること。例えばアラベスクに脚を90度まで上げるとか、目の前にある30キロのスーツケースを片手で持ち上げられるとか。 そして第二に、入れたその力を安定してずーっと入れ続けることが、力のコントロール部分になります。

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足で床を押す

地面をしっかり押して立つ。当たり前のようにも聞こえますが、自分がそれをできているかどうか?そもそも何をどうすればそうなるのか?意外と全く「分からない」という人は多いのではないでしょうか?
片足でボールを踏んづけて立ってみましょう。カチカチではない、弾力性のあるものなら何でも構いません。

ボール踏み立ちおまけポール.jpg

ボールを踏んでいる方の足に体重を掛けて、バランスを取ってピタリと止まってみましょう。どんなポーズでも構いません。 片方の足場が不安定なのに、フラフラと動かないように体を止めるとなると、まず「体のどこに?どのような力を入れるべきか?」を考えるでしょう。 その意識は、体のどこかを固めようとする、収縮の力が働くため「あっちが縮んではこっちを縮め...」の繰り返しとなり、逆にずっと止まれなくなります。

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体を止めようとして止まることができないのなら「ボールがピタリと止まるように」を試してみましょう。

できる限りシンプルに説明すると、
1.ボールに体重を掛けるほど、ボールの弾力性により「押し返しの力」を受ける。
2.自分の押しと、ボールの押し返しが均等に釣り合ったとき、ボールも自分も停止する。
3.すなわち、自分が地面を押す力(体重)と、それを押し返してしっかり立つ力(引き上げ)が、安定して入っている。

ボールから足が滑り落ちるようであれば、まっすぐ押せていないことになりますし、またボールになるべく体重を掛けないようにすれば、それは押しではなく「引きの力」が股関節に向かって入ります。
前ももと裏ももの具合を下の画像で紹介しますので、参考にして下さい。
シンプルで地味なエクササイズですが、この感覚をマスターできれば、揺るぎないバランスを手に入れることができるので、練習してみて下さい。

ちゃんと押せる滑る浮かせる.jpg

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バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。
●藤野富村バレエアート代表
https://www.fujinotomimuraballet.com

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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