【第54回】ももリフトUp&Down - エクササイズ-

バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

普段クラスを教えている中で生徒のみなさんから寄せられる質問をヒントに、どうやったらうまく身体を使えるのか、どうしたら使い方をイメージできるのか、現役ダンサーの藤野先生ならではの視点で解説します。

バレエを踊るということは「その場でじっと立っている」ではなく「よく動く」のが本望。
となれば、脚の動きは「引くこと」よりも「出ること」の方が得意としたいところです。

今回は「太ももの上手なコントロール」を練習するためのエクササイズです。

上げる or 下げる?

前述したように、大腿四頭筋は動きに対して大きなパワーを発揮するが故に、思わぬ動きが出てしまったらぶっ飛んで、全身に迷惑をかけてしまい、また諦めがついたらあっさりと力が抜けて、落ちてしまうところです。
「脚を上手に高く上げたい」という願いは強くても「脚がちゃんと降ろせるようになりたい」という気持ちはなかなか入ってきません。
力が加速していくような「上げる」に対して、上手に減速していく「下げる」という感覚を身につけましょう。

ももリフト Up & Down

ももリフト正しい間違い.jpg

片脚で立って、もう片方の膝を曲げて浮かせます。
ももの骨の丸ごとを床に垂直に感じて、まっすぐのまま引き上げられるところまで上げます。
降ろす時にパッと落とさずに、ももの骨と筋肉を一緒に降ろしていくように。
吸いながら上げて、吐きながら降ろしてを繰り返します。
もものてっぺんから引っ張り上げると、写真のように股関節を引いてしまいます。
膝の下から丸ごとを押し上げられて、ゆっくりと押し下げていくようにしましょう。

例えば前ももに顔が付いていて、表情があったとしたら?
明るいフワァとした顔は浮いていく感じがして、困った顔は沈んでいく感じがすると思います。
太ももの表情もフワリと明るい顔で浮いていき、明るい顔のまま下げてきましょう。

ももの明るい顔.jpg

ももスイング Front & Back

腰に手を当てて真っ直ぐに立ち、膝を90度に曲げたまま、片脚を前後にスイングしてみましょう。
ブンブンと闇雲に脚を揺らすのではなく「前ももがどこを向いているか?」を意識しましょう。
例えば、前ももに鏡を付けたとして、反射する光が「どこに当たっているか?」を考えてみて。
脚を動かす時に「光が通る道筋」を捉えて、降ろす時に「同じ道を通して」返すように意識してみましょう。慣れてきたら、目で追って確認せずに、光の通り道を感覚で捉えてみましょう。
また、前もものどこに鏡を付けるかで、感覚が大きく変わってくるのを、自分で試してみましょう。

ももスイングと光の道筋.jpg

太ももに限らず、踊りを上達するには「カチッとはまるポジション」だけでなく「そこへどう繋ぐかの道筋」を学習して、体に定着させることが大事です。前もものコントロールは、全身を導くリーダーになってくれますので、しっかり手懐けるようにしましょう。

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バレエ・ピラティスによるバレリーナのカラダ講座

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[文 & 写真]藤野 暢央(ふじの のぶお)

12歳でバレエを始め、17歳でオーストラリア・バレエ学校に入学。
当時の監督スティーブン=ジェフリーズにスカウトされて、香港バレエ団に入団。早期に数々の主役に抜擢され、異例の早さでプリンシパルに昇格する。
オーストラリア・バレエ団に移籍し、シニアソリストとして活躍する。
10年以上のプロ活動の中、右すねに疲労骨折を患い手術。復帰して数年後に左すねにも疲労骨折が発覚し手術。骨折部は完治するも、激しい痛みと戦い続けた。二度目のリハビリ中にピラティスに出会い、根本的な問題を改善するには、体の作り、使い方を変えなくてはならないと自覚する。
現在は痛みを完全に克服し、現役のダンサーとして活動中。またバレエ・ピラティスの講師として、ダンサーの体作りの豆知識を、自身の経験を元に日々更新し続けている。
●藤野富村バレエアート代表
https://www.fujinotomimuraballet.com

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[イラスト]あゆお

仙台市在住。マンガ家・イラストレーター。
著書に謎の権力で職場を支配する女性社員「お局様」について描いたエッセイマンガ「おつぼね!!!」。
イラストを担当した書籍に「一生元気でいたければ足指をのばしなさい」。
趣味はロードバイクで走ることです。

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