(荒部 好)

『くるみ割り人形』ベルリン国立バレエ団

ウラジーミル・マラーホフが芸術監督を務めるベルリン国立バレエ団の『くるみ割り人形』は、バトリス・バールの振付・演出による舞台。バールはパリ・オペラ座バレエ団のエトワールとして活躍した後、バレエ・マスターに就任。『コッペリア』『ドガの小さな踊り子』などを振付けている。ベルリン国立歌劇場バレエ団には『ドン・キホーテ』『白鳥の湖』も振付けている。

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このバール版は、主人公マリーが幼い頃に母と一緒にくるみ割り人形で遊んでいると、恐ろしい刀を持った集団に襲われ連れ去られるところから始まる。シュタールバウム家の娘として成長していたマリーたちのクリスマス・イヴにドロッセルマイヤーが現れ、恐怖のために抹殺していたマリーの幼時の記憶を呼び覚ます様々な仕掛けを施す。マリーは幻想の中に再び現れた恐ろしい集団と必死で戦うと、大切にしていたくるみ割り人形がいつの間にか美しい王子となっていた。ここではネズミの軍団そのものは出て来ないが、背後には暗黒の恐ろしい世界があることをほのめかす演出になっている。
ドロッセルマイヤーとともに雪の国など趣向を凝らした旅のシーンがあり、氷の王宮に辿り着いて母との無事に再会を果たす。各国の華やかな踊りがあり、母の元でマリーは王子と結婚することになり、パ・ド・ドゥを踊る。パーティはいっそう華やかになり、いつ終わるとも知れない楽しい踊りの宴が続いていく。しかし、ドロッセルマイヤーが魔法を解くと、人々はみんな人形になってしまう。それはすべて人形の世界の物語だったのか、マリーはドロッセルマイヤーが姿を現した時と同じ空を飛ぶ仕掛けに乗って現実の世へと帰っていく。

マリーはナジャ・サイダコーワ、くるみ割り人形と王子はマラーホフ、ドロッセルマイヤーはオリバー・マッツ、マリーの母と氷の王宮の主人はベアトリス・クノップが踊っている。マラーホフの踊りの美しさとサイダコーワのひたむきな気持ちを込めた踊りが、良い感じにバランスがとれている。マッツのドロッセルマイヤーは熱演で、幻想的な雰囲気をうまく表している。
バレンボイム指揮によるベルリン国立歌劇場管弦楽団の美しい演奏とともに繰り広げられる、雪の女王と雪の精の踊り、マリーと王子のグラン・パ・ド・ドゥ、花のワルツなどが素晴らしい。音楽が幸福の美しい幻想を描いている。ルイザ・スピナッテッリの美術と衣裳もあまりデコラティヴにならす、洗練された印象を与えている。

『くるみ割り人形』全2幕 ベルリン国立バレエ団
発売元/日本コロムビア株式会社
価格/5,040円(税込み)

振付・演出/パトリス・バール、原作/E.T.A.ホフマン、マリウス・プティパ、音楽/ピョートル・イリッチ・チャイコフスキー、美術・衣裳/ルイザ・スピナッテリ、演奏/ダニエル・バレンボイム指揮、バルリン国立歌劇場管弦楽団。
1999年、ベルリン国立歌劇場で収録。
出演 
マリー=ナジャ・サイダコーワ、くるみ割り人形、王子=ウラジーミル・マラーホフ、ドロッセルマイヤー=オリバー・マッツ、マリーの母、氷の王宮の主人=ベアトリス・クノップ、雪の女王=ヴィアラ・ナチェーワ。ベルリン国立バレエ団