荒部 好

『コレオグラフィ・バイ・バランシン』

 ニューヨーク・シティ・バレエの来日公演を記して、「コレオグラフィ・バイ・バランシン」シリーズが2枚のDVDになって発売された。このシリーズは、ヴィデオ・カセットでバランシン・ライブラリーとしてアメリカで発売され、日本では輸入版として売られていたものである。

 映像は、アメリカのテレビ放送PBSの番組として有名な「ダンス・イン・アメリカ」で放映されたものである。バランシン自身が直接指導したダンサーにより、バランシンの振付作品を、バランシンが撮影段階から関与した、20世紀のバレエにとってたいへんに貴重な映像である。

 バランシンはまだ自国の文化と関わるバレエをもたなかったアメリカに、この国ならではのバレエ文化を育て確立した。その出発点の段階で、「まず、学校だ」といって、アメリカン・バレエ・スクール(SAB)を創設した、という話はもはや神話のように語りつがれている。SABは、バランシンのバレエを踊るダンサーを育成する学校で、基本的にはワガノワとブルノンヴィルのテクニックを教えている。今日ではバランシン・テクニックと呼ばれるスピーディな動きをマスターした卒業生が、バランシンのプロットレス・バレエを舞台に実現させるのである。

 ここに収められている映像は、70年代の終わりに撮影されている。パッケージに同封されている解説書に、「コレオグラフィ・バイ・バランシン」シリーズのディレクター、メリル・ブロックウェイのテレビ収録の際のレポートが掲載されている。これが当時全盛時代を迎えていたアメリカのテレビの文化と、古典的美学をモダニズムの方法によって実現したバランシンの芸術性とが、せめぎ合いながら折り合いをつけていく現場のやりとりが記緑されていて、非常に興味深い。『放蕩息子』では初演の時の現実が吐露されているし、そのほかにスタジオのテレビ収録のために行われた振付の変更を、そのままあっさりと舞台にも採用していしまうところなども、バランシンの性格や創作態度、芸術認識などがたくまずして覗かれて楽しくなってしまうのである。



『コレオグラフィ・バイ
・バランシ』パート1・2



『コレオグラフィ・バイ
・バランシ』パート3・4

 

パート1・2収録: 『ツィガーヌ』『ディヴェルティメント15番』より『アンダンテ』『フォー・テンペラメント』『ジュエルズ』より「エメラルド」と「ダイヤモンド」パ・ド・ドゥ『ストラヴィンスキー・ヴァイオリン・コンチェルト』
   
パート3・4収録: 『シャコンヌ』『放蕩息子』『バロ・デラ・レジーナ』『ステッドファスト・ティン・ソルジャー(錫の兵隊)』『エレジー』『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』

主な出演者は、スザンヌ・ファレル、ピーター・マーティンス、マリア・カレガリ、メリル・アシュレイ、ヘザー・ワッツ、コリーン・ニアリー、カリン・フォン・アロルデ、ミハイル・バリシニコフ、パトリシア・マクブライド、ニューヨーク・シティ・バレエ団

『コレオグラフィ・バイ・バランシ』パート1・2
『コレオグラフィ・バイ・バランシ』パート3・4

¥4,935 (本体価格¥4,700)
発売:ワーナーミュージック