荒部 好

『白鳥の湖』スウェーデン・ロイヤル・バレエ団

 スウェーデン・ロイヤル・バレエ団は、日本の観客にはあまり馴染みがないが、1773年にはストックホルム王立歌劇場が設立されており、歴史と伝統のあるカンパニーなのである。
 スウェーデンでは、古くはオーギュスト・ブルノンヴィルの父、アントワーヌがノヴェールのバレエ・ダクションを導入した。またバレエ・リュスの初期の傑作を振付けたミハイル・フォーキンが、ここで活躍したこともあったし、ディアギレフのライバルともいわれたロルフ・ド・マレが、バレエ・スエドワをパリで設立して注目を集めている。
 アントニー・チューダーも『ジゼル』や『リラの園』をストックホルム王立歌劇場で上演しているし、自身のカンパニーを設立する以前にはビルギット・クルベリーが活躍した。そしてその子息のマッツ・エクは『ジゼル』や『白鳥の湖』などのクラシック・バレエを大胆に読み直したことで、世界的に知られている。
 しかし、ここに収録された『白鳥の湖』は、英国人のピーター・ライトが振付け、キエフ・バレエで踊り、サドラーズ・ウエルズ・バレエ、ロンドン・フェステイバル・バレエなどで活躍したガリーナ・サムソワが演出に参加している。

 周知のようにライトの巧みなストーリーテリングは、『ジゼル』『コッペリア』『くるみ割り人形』などで証明されて定評がある。登場人物の心理をはっきりとらえて、じつに無駄のない細やかで説得力のある演出を行うからである。この『白鳥の湖』でも、原典を尊重して損なわないように配慮しながら改訂も加えている。
 例えば『白鳥の湖』にプロローグを付けると、オデットがロットバルトに捕らえられて、白鳥に変えられるシーンにすることが多い。しかしライト版のプロローグは、ジークフリート王子の父王の葬列を見せ、若く経験の少ない王子の不安感を浮かび上がらせる。
 第3幕では、3人花嫁候補にそれぞれソロを与え、愛のある結婚を求める王子の気持ちがはっきりと観客に伝わるように配慮している。
 これまでの『白鳥の湖』の演出は、第4幕でこのドラマをどのように決着させるか、悲劇的結末にするか、あるいはハッピーエンドにするか、様々なヴァージョンが創られてきた。
 では、ストーリーテリングの名手、ピーター・ライトは、どのような結末を選んだのか、それは観てのお楽しみ、ということにしておこう。
 



 

 

原振付:マリウス・プティパ、レフ・イワノフ
振付:ピーター・ライト
演出:ピーター・ライト、ガリーナ・サムソワ
美術:フィリップ・プラウズ
音楽:ピョトール・チャイコフスキー
演奏:ミシェル・ケバル指揮/ストクウホルム王歌劇場管弦楽団
出演:オテット/オディール:ナタリー・ノードクイスト、ジークフリート王子:アンデッシュ・ノードストレム、王妃:マルケッタ・カイラ、ロットバルト:クリスチャン・ランベ、ベンノ:ヨハネス・オーマン、他 スウェーデン・ロイヤル・バレエ団
2002年ストックホルム王立歌劇場で収録

スウェーデン・ロイヤル・バレエ
「白鳥の湖」
(ピーター・ライト版)
5,040円 (本体価格4,800円)
発売/クリエイティヴ・コア