荒部 好

『白鳥の湖』ブルメイステル版 パリ・オペラ座

 パリ・オペラ座バレエ団は、ブルメイステル版とヌレエフ版の『白鳥の湖』をレパートリーにしている。
 このデスクに収められたブルメイステル版は、1877年にボリショイ劇場で初演された時のチャイコフスキーの音楽に回帰して振付・演出されている。王子ジークフリートの意識の流れを物語の軸として展開する演出である。王子の友人ベンノの代りに道化を登場させ、王子の気持ちを象徴的に表す。第1幕では、好意を寄せる王女とジークフリート王子がパ・ド・ドゥを踊り、王妃に要求されている結婚への王子の感傷的な気持ちを表す。道化は王子の心を幻想の世界へと導く役割も担っている。

 第3幕では、オディールはロットバルトの娘であり、オデットに扮装して彼とともにスペイン、イタリア、ハンガリー、ポーランドなど各国の踊り手たちを従えて登場。ドラマティックな表現により、オデットの愛に溺れている王子を欺くロットバルトの陰謀をはっきりと表現している。
 永遠の愛の誓いを破ってしまった王子は、オデットに許しを乞う。そして彼女とともに命を賭してロットバルトと戦い、自ずと永遠の愛の誓いを実証し、勝利することができるのである。

 装置は簡素で、第1幕で王子であることを表すのは、白いの衣裳と一段高い場所に立っている、ということだけである。衣裳は思い切ってデフォルメされ、いわゆる古典的な衣裳のデティールを拒否している。
 曲だけ聴くと耳慣れているプティパ、イワノフ版の曲順とは異なっていて戸惑うが、舞台で踊りに入っているとかえって自然な気もする。いずれ、音楽に関しては解説書に渡辺真弓さんが詳しく書いているので参照されたい。

 さまざまな場面でル・リッシュ、ロモリ、ガイダ、ルステュ、オスタ、ムッサンなど現在エトワールとして活躍しているダンサーたちの顔が多くみられ、オペラ座のダンサーの華麗な人材に圧倒される。一方、主役を踊ったパトリック・デュポンとピエトラガラは、現在は別の場所で活躍している。
 
 


●パリ・オペラ座バレエ『白鳥の湖』
振付・演出:ウラジーミル・ブルメイステル
音楽:ピヨートル・イリッチ・チャイコフスキー
衣裳:毛利臣男
演奏:パリ・オペラ座管弦楽団
指揮:ジョナサン・ダーリントン
1992年7月パリ・オペラ座バスティーユで収録

オデット/オディール:マリ=クロード・ピエトラガラ
王子ジークフリート:パトリック・デュポン
悪魔ロットバルト:オリヴィエ・パテ

パリ・オペラ座バレエ
『白鳥の湖』
\4,900 (本体価格\4,667)
4月12日発売