荒部 好

『ジゼル』ミラノ・スカラ座バレエ団

 ボリショイ・バレエ団のプリマ・バレリーナ、スヴェトラーナ・ザハロワが、ミラノ・スカラ座バレエ団にゲスト出演し、ロベルト・ボッレと踊った『ジゼル』が発売された。
 原振付の改訂は、振付が往年の名花イヴェット・ショヴィレ、演出はやはりエトワールだったフロランス・クレール、というパリ・オペラ座組である。
 全体に振付はよく整っている。特にコール・ド・バレエは、乱れがほとんどない。第2幕などは泰西名画のごとく整然とフォーメーションを守っていた。演出は、古典的なマイムを尊重しているし、細部にも丁寧な表現を加えている。例えば第1幕で、バチルダ姫に婚約者のいることを説明したジゼルが、アルブレヒトを村人たちの中に探す。また、やはりバチルダ姫にもらったネックレスを、アルブレヒトに見せて困惑させる、といったことである。
 ザハロワの関節の柔軟性は圧倒的。あらゆる動きにまったく無理が感じられず、自在にこなしている。ただ見事なプロポーションの長身であり、村娘たちの中では一頭ちをぬいて見える。第2幕は、特に美しいラインを描いて踊っていて申し分ない。
 裏切られ、死んでからも愛する人を愛しつづけるジゼルの愛は、女性の普遍的な愛の象徴といえるだろう。その女性の普遍的な愛が、特別なヒロインではなく、ごく普通の村娘のこころに宿っている、ということがこのバレエの特徴である。舞台全体を通して、そのような愛をどれだけ深く観客に伝えることができるか、という点に『ジゼル』を踊るダンサーの力量が問われることになる。個々の動きやその場その場の演技力がどうか、といった問題ではない。
 ジゼルに扮したザハロワは、その愛をどこまで深く伝えてくれるか、ご覧になった方々が感じとっていただきたい。



スヴェトラーナ・ザハロワ
ロベルト・ボッレ
ミラノ・スカラ座バレエ団

振付/ジャン・コラリ、ジュール・ぺロー
改訂振付/イヴェット・ショヴィレ
改訂演出/フローランス・クレール
音楽/アドルフ・アダン
指揮/デビット・コールマン
演奏/ミラノ・スカラ座管弦楽団
2005年、ミラノ・スカラ座 で収録

ミラノ・スカラ座バレエ団
「ジゼル」 全2幕
TDKコア
5,040円 (本体価格:4,800円)