荒部 好

『Coppelia』K-BALLET COMPANY 2004

今年の5月に初演された熊川哲也版『コッペリア』がDVDになって発売された。『コッペリア』は、熊川哲也が2001年の『ジゼル』以来つぎつぎと進めてきた古典バレエの名作の改訂振付の4作目にあたる。そしてこの『コッペリア』が初めて手掛けた喜劇である。

 古典改訂以外のK バレエのレパートリーにも喜劇的作品が多いとはいえない。熊川が踊った舞台も喜劇的な作品よりも、シリアスなものが圧倒的に多いといっていいだろう。現時点では、既に熊川版の『ドン・キホーテ』を観ているので、ごく普通に感じられるが、『白鳥の湖』の次は『コッペリア』を上演する、と聞いた時には「ついに喜劇をやるのか」とちょっと気になった。日本人のバレエ団は喜劇的作品が苦手、という定評みたいなものもあったからである。

 にもかかわらず、熊川版の『コッペリア』は見事に楽しい喜劇として成功している。成功の大きな原因は、ダンサー熊川がコミカルなキャラクターを上手く演じたこと、現代的感覚で改訂した熊川の演出とダンス・シーンの振付と構成、そしてスチュアート・キャシディの鮮やかな演技、といっていいのではないだろうか。特にキャシディは、若く比較的経験の浅いダンサーが多いK バレエの中で、落ち着いて明解に演技して共演者たちをリードして、際立った存在感をみせている。

 第3幕の康村和恵が踊った「祈り」から始まる、生きる喜びに溢れたダン・スシーンの連続は素晴らしい。ダンスの流れがスムーズで途切れることがなく、思う存分にダンスを観る快楽を堪能することができる。



演出・再振付/熊川哲也、原振付/アルトゥール・サン=レオン
音楽/レオ・ドリーブ、美術/ピーター・ファーマー
フランツ/熊川哲也、スワニルダ/神戸里奈、コッペリウス/スチュアート・キャシディ

『Coppelia』
K-BALLET COMPANY 2004
発売元:TBS
本編97分
\8,190 (本体価格\7,800)