荒部 好

『くるみ割り人形』英国ロイヤル・バレエ

 2001年にコヴェント・ガーデン・ロイヤル・オペラハウスで収録された、ピーター・ライト版の『くるみ割り人形』である。
 アンソニー・ダウエルがドロッセルマイヤーに扮して、物語の世界全体を取り仕切っている。ダウエルはプリンシパル・ダンサーを引退した後も、『三人姉妹』や『マノン』『シンデレラ』などで、演技力が必要で舞台全体の印象に深く関わる役で存在感を遺憾なく発揮している。特にこの舞台では、ストーリーテリングに類い希な才能を見せるピーター・ライトが、じつに細やかな演出を行っているので、ダウエルの舞台の雰囲気をコントロールする落ち着いた演技力が必要だったに違いない。
 クララとこんぺいとうの精を別のダンサーが踊るライト版では、初々しく少女らしく、しかも見事に踊れるダンサーが不可欠だが、そのためにこの時期のアリーナ・コジョカルはまさにぴったりである。
 ダウエル、コジョカルがライトの振付の趣旨を活かして踊り、ジョナサン・コープの王子と吉田都のこんぺいとうの精のグラン・パ・ド・ドゥが終盤を盛り上げる。
 英国ロイヤル・バレエ団の優れたダンサーたちの「旬」を、際立たせて創られたじつに素晴らしい『くるみ割り人形』である。


『くるみ割り人形』

 

『くるみ割り人形』

原作/E.T.A.ホフマン
原台本/マリウス・プティパ
原振付/レフ・イワノフ
振付/ピーター・ライト
音楽/ピョトール・チャイコフスキー

ドロッセルマイヤー/アンソニー・ダウエル
クララ/アリーナ・コジョカル
ハンス=ペーター/イヴァン・プトロフ
こんぺいとうの精/吉田都
王子/ジョナサン・コープ
英国ロイヤル・バレエ団

●英国ロイヤル・バレエ団の創設者、二ネット・ド・ヴァロワが演出・振付けた『コッペリア』も同時に発売された。

『コッペリア』
原振付/レフ・イワノフ、エンリコ・チェケッティ
振付・演出/二ネット・ド・バロワ
音楽/レオ・ドリーブ
スワニルダ/リャーン・ベンジャミン
フランツ/カルロス・アコスタ
コッペリウス博士/ルーク・ヘイドン
夜明け/マラ・ガレアッツィ
祈り/ゼナイダ・ヤノウスキー,br> 英国ロイヤル・バレエ団
2000年、コヴェント・ガーデン・ロイヤルオペラハウスで収録