荒部 好

『ザハーロワ/ロパートキナ』ロシア・バレエの新たな伝説

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マリインスキー・バレエのウリヤーナ・ロパートキナとボリショイ・バレエのスヴェトラーナ・ザハーロワ、というロシア・バレエを代表する二人のバレリーナの現在を追うドキュメンタリーを収録したDVDが刊行された。
ボリショイ・バレエのプリマ、ザハーロワは、『白鳥の湖』のオデット、オディールを踊ると、じつに美しいラインを描く。新国立劇場バレエにシーズンスペシャル・ゲストとして、しばしば主演しているので、日本のバレエファンにはもうお馴染みだろう。

マリインスキー・バレエのトップバレリーナ、ロパートキナのオデット、オディールもまた、当代随一という呼び声も高い。『白鳥の湖』に限らず、ステージに立ったロパートキナは、手指の先端から毛髪の一本一本、ポワントの先と接する舞台床まで、細心を凝らした神経を行き渡たらせて正確無比に踊る。彼女自身が全身の動きを細部に至るまで完璧に把握しているので、どの役を踊ってもそれはロパートキナその人の比類ない踊りとなっている。
まるで鍛え抜かれた白刃が孤高の美しさに輝くように、ロパートキナの踊りは緊迫感と集中力によって絶え間なく磨き込まれている。この映像の中でも、稽古に向かうのは闘いに行くのと同じ、と語っているが、彼女の踊りのスピリットは、死を賭して決戦に臨む侍の精神を彷彿させるものがある。

一方ザハーロワは、彼女が描くラインの美しさは彼女が想像しているよりも美しいのだが、彼女にはまだ、自分の踊りのほんとうの美しさに彼女自身気付いていない面がある。それがじつは、ザハーロワの魅力であり、未だ秘められた大きな可能性でもある。
この映像にもしばしば登場しているが、ザハーロワの師は彼女と同様にマリインスキー劇場からボリショイ劇場に移籍した往年のプリマ、セメニャカ。マリインスキー劇場で身に着けたセメニャカの典雅は、力感漲るボリショイ劇場の舞台で一段と魅力を輝かせたが、今まさにザハーロワは、さらなる高みへと飛翔しつつある。

『ザハーロワ/ロパートキナ』ロシア・バレエの新たな伝説
出演/スヴェトラーナ・ザハーロワ、ウリヤーナ・ロパートキナ
クリエイティヴ・コア
4,410円(本体価格4,200円)