(荒部 好)

『シンデレラ』K-BALLET COMPANY

近年のバレエ『シンデレラ』は、ほとんどペローの童話の世界に忠実に創られている。ハリウッドに舞台を移したヌレエフ版や登場人物全員にデフォルメされた仮面を着け、人形として踊られるマギー・マラン版などが異色作と言えるだろう。

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オーソドックスに創る場合は、ペローの童話とプロコフィエフの音楽をどのようにステイジングするか、とうことが問題になる。その点で熊川哲也版は非常に優れている。
例えば、家族構成も実の父が登場する場合も多いが、熊川版では登場しない。だから孤立無援のシンデレラにとって、実の母の思い出の品は何ものにも代え難い宝物である。それをルーク・ヘイドン扮する義理の母は、いとも簡単に火の燃え盛る暖炉に投げ捨てる、このシーンを観ていた私は思わず「ひどい!」と呟いた。
そしてまた、この冒頭シーンはの義理の姉妹たちの振付が見事。際立って特徴的なプロコフィエフの音楽と、ドレスや箒などの小道具を巧みに使ったステップが活き活きと踊られる。義理の姉妹たちは身体に嫌がらせをして苛めるし、義母はシンデレラが心の中でもっとも大切にしている部分にひどいダメージを加えるのである。
しかし、シンデレラはめげない。楽しい夢想に耽って自分を取り戻す。そして仙女には優しく人間的に接することができる。
この冒頭のスプラスティックに踊られるアップテンポの展開から魔法の時間に至までの流れが、うまく音楽と物語と振付が一体になって見事だ。
映像でぜひ、この導入部から壮大なファンタジーの世界に至るまでをじっくりと味わってもらいたい。
キャストは松岡梨絵のシンデレラと宮尾俊太郎の王子。K バレエ カンパニーの人気コンビである。
熊川とのコラボレーションがディテールまで決まっているヨランダ・ソナベントの衣裳とレズリー・トラヴァースの舞台美術が、ミステリアスで光輝く魔法の世界を存分に味あわせてくれるはずである。
特典映像に芸術監督・熊川哲也へのスペシャルインタビューが収録されている。

『シンデレラ』K-BALLET COMPANY
演出・振付:熊川哲也 
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
キャスト:シンデレラ/松岡梨絵、王子/宮尾俊太郎、仙女/浅川紫織、義母/ルーク・ヘイドン、義姉妹/岩淵もも、湊まり恵

制作著作・発売元/TBS 販売元/ポニーキャニオン
本編115min + 特典映像9min  税抜7,800円