(荒部 好)

『不思議の国のアリス』全2幕 英国ロイヤル・バレエ団

英国ロイヤル・バレエ団の芸術監督のモニカ・メイスンは、公演のプログラムを組んでいて、このカンパニーでは長い間新しい物語バレエが生まれていないことに気付く。実際、16年間も全幕の新作がなかったのだった。そしてクリストファー・ウィールドンの提案による『不思議の国のアリス』が製作された。
ウィールドンはロイヤル・バレエ時代から振付家を志し、ニュ−ヨーク・シティ・バレエ団で常任振付家を務め、自身のカンパニーを設立運営したこともあった。モダンな感覚の持ち主だが、同時に物語バレエを創る才能も垣間見せていた。そのウィールドンが採り上げた題材は、まさに英国の文化のひとつの面を象徴するルイス・キャロル作の『不思議の国のアリス』だった。

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主演のアリスに選ばれたのは英国出身でロイヤル・バレエ学校に学んだローレン・カスパートソン。ロイヤル・バレエ期待のスター候補だ。カスパートソンは少々内気だが、想像力のパワーを秘めたアリスのイメージを見事に表した。ハートのジャックと庭師のセルゲイ・ボルーニン、白ウサギとルイス・キャロルを演じたエドワード・ワトソンも闊達な踊りだ。そしてハートの女王とアリスの母の役を快演したゼナイダ・ヤノウスキーは圧巻だった。もう二度とロマンティック・バレエは踊ることは出来ないのではないか、と思われるほどの強烈な演技で大いに印象に残った。
「スカートもバレエも初めて」というオリビエ賞受賞の名優サイモン・ラッセル・ビールの公爵夫人も舞台を味付けしている。タップハッターことマッドハッターやイモ虫、三月うさぎ、チェシャ猫、トランプカードなどのイメージもそれぞれにおもしろい。さすが、アリスの本家本元の英国というだけでなく、着ぐるみバレエなどを得意とする英国ロイヤル・バレエ団のすべての技術の精髄が作った全幕新作バレエである。内容をあれこれいうよりもとにかく「観て楽しむ」バレエになっている。
2011年2月の世界初演の時の舞台評が、多くの写真とともに掲載されているので、こちらも参照していただきたい。
http://www.chacott-jp.com/magazine/world-report/from-london/london1104a.html
 

『不思議の国のアリス』
振付/クリストファー・ウィールドン
音楽/ジョビー・タルボット
美術・衣裳/ボブ・クロウリー
演奏/バリー・ワーズワース指揮、ロイヤル・オペラハウス管弦楽団

アリス/ローラン・カスパートソン
ハートのジャック、庭師/セルゲイ・ボルーニン
白ウサギ、ルイス・キャロル/エドワード・ワトソン
ハートの女王、アリスの母親/ゼナイダ・ヤノウスキー
マッド・ハッター、マジシャン/スティーヴン・マクレガー
三月ウサギ、牧師/リッカルド・セルヴェラ
公爵夫人/サイモン・ラッセル・ビール
英国ロイヤル・バレエ団

2011年3月 英国ロイヤル・オペラハウス収録。121分+29分
販売元: 日本コロムビア 4,800円+税