(荒部 好)

『Le Songe』真夏の夜の夢 全1幕 モナコ公国モンテカルロ・バレエ団

3月に来日公演を終えたばかりのジャン=クリストフ・マイヨー率いるモンテカルロ・バレエ団の『Le Songe』は、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』を全1幕に舞踊化したもの。振付は芸術監督のジャン=クリストフ・マイヨー。モンテカルロ・バレエはディアギレフのバレエ・リュスの拠点であったことでも知られ、1938年にはレオニード・マシーンが芸術監督を務めたバレエ・リュス・ド・モンテカルロとして活動したこともあった。その後モナコ公国のグレース王妃の遺志を継いだカロリーヌ王妃の支援を受けて復活。ギレーヌ・テスマー、ピエール・ラコットを芸術監督として迎えた。さらに1993年にはマイヨーが芸術監督となり、独自の美的センスの基づいて、スリムな身体とニュアンスのある表現力を持つダンサーを育て、マイヨーならではのエロスの香りのある作品を創り活発に活動している。またマイヨーはモンテカルロで開催される「ダンス・フォーラム」の芸術監督でもあり、、周知のように今年のローザンヌ国際バレエ・コンクールの審査委員長も務めている。

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マイヨーの『Le Songe』は、まずその世界を妖精、アテネの人々、職人たちに分けた。そして使用する音楽を、妖精はダニエル・テルッジの電 子アコ-スティック音楽、アテネの人々はメンデルスゾーン、職人たちは振付家の弟のべルトラン・マイ ヨーの曲とした。
オベロン、タイターニア、パックなどの妖精は愛の本能そのもの、人間たちの愛が妖精の姿となっていて、彼らは神々となって人間の前に現れるが、人間の目には見えない。
ハーミア、ライサンダー、デミトリアス、ヘレナなどのアテネの人々は、愛し合い結婚を望むごくふつうの人間。ニック・ボトム、クインス、ロビ ン・スターヴリングなどの職人たちは、結婚式の余興の芝居創りに職人らしく熱中している。
『真夏の夜の夢』をこのように整理したことは、舞踊化する上でなかなかおもしろいアイディアで成功していると思われる。
この三つの世界が交錯し、オベロンの要望やパックの戯れ心が作用して、愛に関する様々の姿が露になる。そのマイヨーのブレンドが絶妙だった。
中でも、オベロンによりロバに変身させられたボトムと、そのロバに惚れさせられてしまったタイターニアが愛し合 うシーンが圧巻。メタリックな身体に密着した衣裳と、尖端に房のついた長い白い綱を使った大胆な動きには感心した。また、コメディ・フランセーズの薫陶を受けたという職人たちの劇中劇も見応えがあった。
終盤の結婚式では、収まるべきところに収まったカップルが愛の結晶となって、アテネの彫像のごとくポーズをとった。エロスの世界を鮮やかに象徴的に表現した結末だった。

『真夏の夜の夢 Le Songe』
税込5,040円(税抜4,800円)
発売元 日本コロムビア株式会社
100分 収録2008年
出演 タイターニア/ベルニス・コピエテルス、オーベロン/ジェローム・マルシャン、パック/ジェローン・ヴェルブルジャンほか。モンテカルロ・バレエ団