(荒部 好)

『小さな村の小さなダンサー』

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昨年公開された映画『小さな村の小さなダンサー』がDVDになった。
これは中国を亡命してヒューストン・バレエ団やオーストラリア・バレエ団などで活躍した、リー・ツンシンの体験を描いた『毛沢東のバレエダンサー MAO'S LAST DANCER』を映画化したもの。
リー・ツンシンに扮して主演したのは、バーミンガム・ロイヤル・バレエ団(BRB)のプリンシパル、ツァオ・チー。今年5月に行われるBRBの来日公演では、日本人プリンシパルの佐久間奈緒とピーター・ライト版『眠れる森の美女』とフレデリック・アシュトン振付の『真夏の夜の夢』を主演する。

映像はリー・ツンシンが、1981年、ヒューストン・バレエ団の芸術監督のベン・スティーブンソンに空港で出迎えられて、初めてアメリカで生活を始めるシーンから始まる。そしてカットバックすると、70年代中国の山東省の寒村が映し出されるが、巨大ビルが林立し生活のすべてがコンビニエンスに機能的になっているヒューストンと、明日の食事を得るために必死に働いている中国の内陸部の家族の強烈な格差はほんとうに衝撃的だ。
共産主義社会と資本主義社会という政治体制の違いが、バレエ界にも大きな影響を及ぼしていて、バレエダンサーとして生きようとするリー・ツンシンに様々な難題が襲ってくる。そうした事実をこの『小さな村の小さなダンサー』は、非常にドラマティックに描いている。
劇中ではオーストラリア・バレエ団により『ジゼル』『白鳥の湖』『ドン・キホーテ』、オリジナル作品などが踊られている。振付は来日公演でも話題を呼んだグレアム・マーフィーのオーストラリア・バレエ団のヴァージョンである。特に本火を使った演出の『春の祭典』が強烈だった。
ロケは中国のシーンはすべて北京、そのほかはヒューストンとシドニーで行われたそうだが、それぞれの「時代の色彩」が際立ったコントラストをみせた素晴らしい映像だった。
30年ほど前のバレエ界ではバレエダンサーとして生き抜いていくには、この映画ほどではないにしても、やはり厳しいものがあったのである。そうしたことを簡単に忘れないためにもこの映画貴重なものといえるだろう。

『小さな村の小さなダンサー』
販売元/オデッサ・エンタテインメント
価格/DVD 3,990円(税込)、BD 4,935円(税込)
★BD映像特典 日本版劇場予告編、ツァオ・チー、リー・ツンシン来日インタビュー映像など(予定)
(2011年7月8日発売)

2009年、オーストラリア映画、本編 117分
監督/ブルース・ベレスフォード、脚本/ジャヤン・サルディ
出演
リー・ツンシン/ツァオ・チー、ベン・スティーブンソン/ブルース・グリーンウッド、チャールズ・フォスター/カイル・マクラクラン、エリザベス/アマンダ・シュル、母/ジョアン・チェン、父/ワン・シャオ・バオ