(荒部 好)

『ロミオとジュリエット』K バレエ カンパニー

Kumakawa's production of『ROMEO & JULIET』
K-BALLET COMPANY
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K バレエ カンパニーの10周年を記した2009年の全国ツアーのために新制作された熊川哲也 演出・振付による『ロミオとジュリエット』。熊川にとっては8番目の古典名作バレエの新プロダクションとなった。以前の7作はすべて19世紀の全幕バレエだったが、プロコフィエフの曲による『ロミオとジュリエット』は、初めて手掛ける20世紀の全幕バレエである。

ゲストには英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、ロバルタ・マルケスが招かれジュリエットを踊った。
熊川哲也版は、冒頭の闊達な踊りが繰り広げられるイタリア、ヴェローナの街の広場から活力あふれる舞台を創っている。プロローグではロザライン(松岡梨絵)を登場させて、物語全体の流れを巧みに表した。
そしてロミオとジュリエットの出会いとなる、キャピュレット家の舞踏会のシーンは、ティボルトやキャピュレット卿、パリス、マキューシオなどを次々と登場させてじつに細かく慎重に演出されているばかりでなく、観客をドキドキさせるようなロマンティックで幻想的な演劇的効果も見事だった。もちろん熊川はバレエダンサーであるが、過去の作品でもそうであったが演出家としてもたいへん優れた能力を持っている。ただそれが演劇作品に発揮されるかどうかは分からないが、少なくとも音楽が常に奏でられているバレエの演出は卓抜である。このシーンでも、ジュリエットのモチーフである抒情的なメロディがリフレインされて、じつに印象深く胸に響いてきたが、これはもちろん演出が的確で優れているからに違いない。

熊川が踊ったロミオの闊達さとロマンティックな精神性とともに、マルケスのジュリエットは誠に忘れ難い。両親に知らせずにロミオと結婚して初夜を過ごした後に、パリスとの結婚を迫られ窮地に陥るが、ロミオの形見ともいえるクロスを握りしめて決死の行動をとる健気さ。マルケスの踊りが表現する気高いスピリットがたいへん感動的だった。
熊川哲也版『ロミオとジュリエット』には、K バレエ カンパニーの10年間の苦闘と創造的成果の一端が映像として結晶しているのである。

『ロミオとジュリエット』
Kumakawa's production of『ROMEO & JULIET』
K-BALLET COMPANY


演出・振付/熊川哲也
音楽/セルゲイ・プロコフィエフ
舞台美術・衣裳デザイン/ヨランダ・ソナベンド

ロミオ/熊川哲也、ジュリエット/ロベルタ・マルケス、マキューシオ/橋本直樹、ロザライン/松岡梨絵、ティボルト/遅沢佑介、ベンヴォーリオ/伊坂文月、パリス/宮尾俊太郎、キャピュレット卿/スチュアート・キャシディ、キャピュレット夫人/ニコラ・ターナ、乳母/樋口ゆり