(荒部 好)

THE POINTE BOOK 『ポアントのすべて』

THE POINTE BOOK
『ポアントのすべて』トウシューズ、トレーニング、テクニック
ジャニス・バリンジャー、サラ・シュレジンガー/著
佐野奈緒子/訳

『ポアントのすべて』という本が邦訳、刊行された。著者ジャニス・バリンジャーはニューヨークにあるベース大学で教鞭をとっている人。プロのダンサーとして25年以上のキャリアがあり、アメリカの多くのダンスセンターやスタジオで教え、多くの舞踊誌に執筆している。ニューヨーク大学で教えているサラ・シュレジンガーと共著である。

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先頃亡くなったアメリカの著名な教師デヴィッド・ハワードが、刊行にあたって一文を寄せている。
この400ページにおよぶ一冊はそのタイトル通り、「バレエに必要不可欠なトウシューズに関わるあらゆることについて、最新の情報源となること」を目指して執筆されている。
トウシューズの始まりは、1815年から30年頃にかけてイギリスやフランスの舞台で、現在の祖型となるものが使われ始めた、と言われているが詳しい実態は分かっていない。いずれにせよ、このころから200年近くに渡ってありとあらゆる工夫がなされて、今日のトウシューズとそれを巡る様々な文化が進化、形成されてきたわけである。
この書もまず、トウシューズの歴史から紐解いている。
そして全体を15章に分け、足およびポワントの構造、トウシューズの制作工程、フィッティングの手順、ブランド別サイズ、トウシューズの準備とケア、付属品、世界中のショップ、「いつからポアントの練習を始めたらよいか」といった指導法、そしてポワントトレーニングの方法として、レベル別練習法、怪我と治療、ロイヤル・バレエ・スクールを始めパリ・オペラ座バレエ学校、ABT、NYCB付属のバレエスクールなどの所在地、電話fax番号、Eメールアドレス、トレーニングスタイルも紹介されている。また27名の有名ダンサー、シューズマスターへのインタビューを掲載し、21世紀におけるポワントの意義を述べて本書を結んでいる。
当然、フリード・オブ・ロンドンのメインフィッター、ミシェル・アットフィールドやチャコットのスタッフの専門知識も参考とされている。
近年のダンサーは、クラシック・バレエだけを踊っていて事足りる訳ではなく、コンテンポラリー・ダンスなどにも対応していかなければならず、それだけトウシューズの重要性は相対的に低下している、と言われるがまた逆に、クリストファー・ウィールドン、アレクセイ・ラトマンスキー、ジェイムズ・クデルカ、エドワルド・ロックなどの、次世代を担う優れた振付家の作品で履かれているトウシューズは、21世紀のバレエの新しい可能性を感じさせてくれる。
最後に本書にも掲載されているウォルター・テリーがしばしば引用した、バランシンの言葉を記しておきたい。
「バレエは人間が作るものだ。詩と同じように、発明するものだ。言葉では失敗するところでも、詩は成功することができる。バレエでも同じことが言える。説明できないことでも、ポワントでなら表現できるのだ。ポワントで物語を語ることはできない、けれどイマジネーションをもってポワントが使われれば、音楽や色が光にあたって変化するような感覚を与えられるだろう。この感覚によって、ポワントは、物語は語れなくとも、劇的な効果を伝えることができるのだ。ポワントに立ったバレリーナこそが、ダンスにおける最高の姿だ。」