(古見英瑠)

コミック版世界の伝記『マイヤ・プリセツカヤ』

漫画:迎 夏生 監修:村山久美子
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昨年、2015年5月に89年の生涯に幕を閉じたバレリーナ、マイヤ・プリセツカヤのコミック版の伝記が出版された。
巨大国家ソ連の社会主義体制に翻弄されながらもバレエを愛し続け、70歳をすぎるまで踊り続けた彼女の人生が、時代背景と共に分かりやすくまとめられている1冊。

モスクワで生まれたマイヤは、ともにボリショイ・バレエのダンサーだった叔父(アサフ・メッセレル)と叔母(スラミフィ・メッセレル)、芸術を愛する親族のなかで育ち、9歳でボリショイ・バレエ学校へ入学。12歳の時にスパイを疑われた父が逮捕され、翌年には母も失踪。実は母は強制収容所に送られており、父はその後処刑されていた。マイヤは叔母のメッセレルに引き取られる。
16歳の時にはソ連とドイツとの戦争が始まり疎開をするも、バレエのためにひとりモスクワへ戻ってくる。今の日本では考えられないような過酷な少女時代を送りながらもバレリーナを目指し続ける。
そしてマイヤはボリショイ・バレエ団に入団、1945年にドイツが降伏し第二次世界大戦が終わる。その後もソ連という国家の体制により彼女は監視、制限された生活の中で、スパイや亡命を疑われながらもついに35歳でプリマとなり、踊り続けて65歳でボリショイを引退する。
引退後も踊り続け、世界各国で数々の賞を受賞しているマイヤは、日本でも高松宮殿下記念世界文化賞や旭日中綬章を受賞している。

本の中には夫となる作曲家シチェドリンや、メッセレル兄妹のほか、ワガノワ・メソッドの基礎を確立したアグリッピーナ・ワガノワ、ヌレエフとフォンティーン、ユーリー・グリゴロービチ、プティ、バランシンなどダンス界の著名人のほか、バーンスタイン、ジーン・ケリー、オードリー・ヘップバーンらも登場する。
20世紀最高と謳われるバレリーナの生涯を漫画で綴るだけでなく、彼女の暮らした国、ソ連についてや、その時代の年表、バレエについての基礎も解説されている。子どもたちだけでなく、大人が読んでも十分に楽しめる。

コミック版世界の伝記『マイヤ・プリセツカヤ』
ポプラ社/刊
漫画/迎 夏生 監修/村山久美子
定価/950円+税