荒部 好

『プラムガール』

トレイシー・ポーター著/岡本浜江 訳
  これは、クラシック・バレエを習い始めたアメリカ、ワシントンに暮らす少女ディ リアの物語。ディリアの母は、彼女が物心つく前に死んでしまった。姉のパールは、 黒魔術に凝っていて学校を転々と変っている。父は、ベイカリーを経営しているが、 サイクリングに熱中している。

  ディリアは著名なロシア・バレエ教師、マダム・エラノヴァのバレエ・スクール に入る。バレエの歴史に名を残す活躍をしたマダムに強く憧れ、彼女に認められプロ のバレリーナになろう、と必死で努力する。そして、『くるみ割り人形』の重要な役 を踊ることになった……。

  バレエに想い入れ一生懸命なディリアが経験する、苛酷なバレエの稽古とマダムの 叱責、母を失ったことへの姉や父の想い、親友クレアとの晴れ舞台の配役をめぐる行 き違い、そして迷路に入ったような孤独、などが彼女の心の形成にどのように影響を 与えていくか。

  実際に厳格なバレエ教育を受けた作者が、思春期の少女の繊細な心と極めて微妙 に揺れ動く気持ちをまことにこまやかな表現で描いていて、なかなか読みごたえの ある小説である。

  バレエを習っている人、習ったことのある人、習おうとしている人、バレエに関 心を持っている人、そんな人たちには必ず共感するところがあると思われる。最後に でてくるインディアンのエピソードからは、ピナ・バウシュのインディアン・ソング を手話で踊った『カーネーション』を思い出し、思わず落涙。


「プラムガール」
ポプラ社
1,365円  (本体価格1,300円)