荒部 好

『バレエ漬け』『全身「からだ革命」』

草刈民代
 牧阿佐美バレエ団のプリマ、草刈民代が二冊の本を上梓した。
『バレエ漬け』は、バレエダンサーとしての自身を振り返りつつ綴ったエッセイ集である。草刈自身の身辺に起ったこと、ダンサーとして女優として経験したことを、気取らずに率直に実寸大で語っている。
 草刈は40歳になったそうだが、彼女は、バレエを習いはじめた小学校の2年生の時から、「私ってなぜ踊っているんだろう?」とずーっと考え続けてきたのではないだろうか。『バレエ漬け』を読んでそう感じた。
 ルーマニアで腰の痛みに耐えながら踊っていた時、椎間板ヘルニアのために5ヶ月間怪我と闘った時はもちろん、牧阿佐美バレエ団で主役を踊っている時、敬愛するプリセツカヤに指導を受けて『カルメン』を踊った時、『Shall we ダンス?』の撮影をしている時、映画監督と結婚式を挙げている時、ハリウッドでドレスを着てレッドカーペットの上を歩いている時、ロ-ラン・プティに『若者と死』を踊らないかと語りかけられた時、いつも彼女の胸には「私ってなぜ踊っているんだろう?」という問いが去来していたと思われる。
 草刈はこの『バレエ漬け』を書くことで、自身の胸に彼女なりの答えを提出したのである。
 この本には、舞台も衣裳もセットもないが、バレエを踊る、ということにすべてを賭けたひとりの女性の、ごく自然な告白が描かれている。女性誌の表紙を飾る「バレエダンサー草刈民代」を身近な女性として感じることの出来る本といえるだろう。

 もう一冊は、一人のプリマバレリーナがどのように身体を扱ってきたか、を書いた『全身「からだ革命」』である。
 この本は、「自分自身には目を向けず、理想ばかりを追いかけていた」ために、「20代後半に無理な稽古や食生活がたたり」椎間板ヘルニアになってしまい、「それを克服するために実践した食事やトレーニングを通して、自分の身体や、自分自身のことを見直」したことをまとめたものである。
 怪我をしてから再び踊れる身体になるために出会った、メンタル&フィジカルトレーナー、理学療法士、ピラテスインストラクターと実際に行った療法や処方が書かれている。どのようなことをなぜ行ったか、を施した側と受けた側が極めて具体的に述べているのである。
 ただ、よく踊れているようにとか痩せているようにみられたい、という表面的なことでなく、食事、ボディ・コンディショニング、メンタルトレーニングにより、「成熟した美しさを本当に自分のものにする」ための実際の道筋が示されている本である。


『バレエ漬け』


『全身「からだ革命」』

 

『バレエ漬け』
幻冬社刊
1,470円  (本体価格1,400円)

 

『全身「からだ革命」』
講談社刊
1,470円  (本体価格1,400円)