荒部 好

『北国からのバレリーナ』

佐藤俊子著
オリガ・サファイアというロシア人バレリーナがいたことをご存知だろうか? 
日本にクラシック・バレエをもたらしたのは、エリアナ・パヴロバとオリガ ・サファイアという二人のロシア人バレリーナである。この二人は、日本で 生活しながら、当時ほとんど知られていなかったクラシック・バレエを日本 人の生徒に教え、多くのバレエ作品を上演した。
  エリアナ・パヴロワについては、近年にチャコットで展覧会を開催した ので、ご存知の方も多いかもしれない。
  オリガは、1907年生れで、1936年に29歳で来日。エリアナより10歳ほど 年下だが、日本に来た時の年齢はオリガが7歳ほど上。エリアナはキエフの貴 族の家系の家に生まれたが、オリガはぺテルブルクのドイツ系の技術者の家庭に生まれた。
 
  エリアナは日本語がほとんどできなかったため、自分のキャリアや考えを 正確に伝えることができなかった。オリガは、日本で一番うまい、といわ れたロシア語の名手、外交官の清水威久と結婚し、日本国籍を取得。日劇で バレエを教え、しばしば舞台にも立った。夫君の清水がバレエにも積極的に 関心を持っていたので、彼女のキャリアや日本のバレエ界への提言などを、3 冊の書籍を著わして伝えた。今、読んでもオリガの言葉は示唆に富み、的確 に日本バレエ界の問題点を突いている。
 
『北国からのバレリーナ』は、オリガの愛弟子だった佐藤俊子が師の肖像を 描いたもの。1981年のオリガの死から始まって、モスクワ時代、日劇の教師 になった頃、日劇バレエ時代から戦後までを尊敬の念をもって綴っている。

  オリガの著書はみんな絶版になっており、佐藤俊子が書いたこの『北国 のバレリーナ』だけがわずかだが、現在、チャコットに入荷している。
  なお、今年7月には、東京、大阪、名古屋のチャコットで、オリガ・サ ファイア展が開催される。詳細は次号で。


「北国からのバレリーナ」 -オリガ・サファイア-
霞ヶ関出版
1,260円 (本体価格1,200円)