荒部 好

『ダンス・コンディショニング』感じてとらえるからだの仕組みと使い方

岸田明子 著
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ダンサーをインタビューしていると、時々、身の竦むような恐ろしいエピソードに遭遇することがある。突然起る怪我の話である。
中でもアメリカの主要なモダンダンスのカンパニーで踊っていた日本人ダンサーが、ブロードウェイを自宅に戻るために歩いていて、突然、足が上がらなくなったという話はショッキングだった。そのダンサーは、手で脚を一歩一歩持ち上げながら帰宅したそうだ。そして彼女は、その後さらに厳しい現実と立ち向かわなければならなくなった。

『ダンス・コンディショニング』は副題にあるように、自分自身で感じてからだをとらえ、その仕組みを知って使うための本である。
筆者は、北里大学を卒業し、ニュ−ヨーク州立大学大学院ダンス学部ダンスサイエンス&ソマティックスを学んだ。さらにダンス理学療法士の元でインターシップも務めている。
『ダンス・コンディショニング』は、「シン・ソマティックス」というメソッドを使ってダンサーとカラダの関係を整える方法を、実践の画像を修めたDVDとともに紹介する一冊。
「シン・ソマティックス」の「ソマ」はギリシャ語で「からだ」を意味するそうだ。ただ、他人が客観的にみた「からだ=ボデイ」ではなく、自分だけが感じとれる主観的な「からだ」を指す。自分自身が全身の感覚を通して感じとらえた「からだ=ソマ」を内側から感じながらからだへの理解を深め、感覚を育てる。そしてからだのもつ様々な可能性を探求し高めていく方法および学問が「ソマティクス」。
「シン・ソマティクス」はその「ソマティクス」のメソッドのひとつで、「シン」は、禅の「中心/芯/心/身/精神」に由来しているそうだ。

ダンサーに必要なコンディショニングの要素は、「アライアメント・バランス、神経と筋肉の協同性、柔軟性、からだの弛緩、筋力、筋持久力、心肺持久力」があるが、シン・ソマティックスによって最初の4項目が向上できる。
ここでは、「体験的解剖学」として足、膝、骨盤、肩、首ほかの8つの部位と全身の仕組みとムーヴメントレッスンを解説。さらに身体全体につなげる「身体の軸」と「動きの発生」、「日々のレッスンに向けた心身の整え方」が、懇切なイラスト入りで説明されている。
「体験的解剖学」のそれぞれの部位のムーヴメントは、115分のDVDにすべて収められて本書に付されている。
身体を究めるためには、主観的な感覚をないがしろにせずにからだへの理解を深め、豊かな動きを創りだしていくことが重要、とこの一冊は説いているのである。
 

スキージャーナル社 刊
B5+DVD(115分) 本体2,800円+税