(荒部 好)

『ダンステクニックとケガ----その予防と治療』改訂版

ジャスティン・ハウス+モイラ・マコーマック/著
平石英一/監訳、白石佳子+水村真由美/訳

英国ロイヤル・バレエ・スクール、イングリッシュ・ナショナル・バレエなどのコンサルタント整形外科医のジャスティン・ハウスと、英国ロイヤル・バレエ団所属の理学療法士のモイラ・マコーマックの共著による『ダンステクニックとケガ----その予防と治療』の改訂版が刊行された。

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まず、ニネット・ド・ヴァロワの献辞。
「この本はまた、振付家にも考えるべきことを提示しています。振付をする際に、科学的あるいは現実的に考えている振付家は、現在のところ多くはありません。作曲家は歌手の音域に合わせて作曲することを思い出してください。同じように、振付家は、ダンサーの四肢の制限だけでなく、ダンサーの体力の限界についても、より注意深く考えなければならないのです」
これは、英国バレエを牽引して揺籃期から今日の活動の基礎を築いた、ド・ヴァロワらしい貴重な経験に裏打ちされた実質的な意味をもつ言葉である。
実際に近年は、英国ロイヤル・バレエやパリ・オペラ座バレエ団の公演の概要を見ていると、ダンサーの怪我による降板が相次いでいる。さらには、わずか1年余の在任期間で終わったミルピエ、オペラ座芸術監督が打ち出したダンサー対策の充実の方針などを聞くと、バレエのテクニックとダンサーの身体については、まだまだ現実的に究明しなければ多いことが分る。

内容は、第1章「体の構造としくみ(解剖学と生理学)」ここでは体のしくみを説明した後、「スタンス」「ターンアウト」「プリエ」「タンデュ」「アラベスク」「ルルヴェ」「ポアント」といったバレエに即した説明がある。第2章「ケガ:病理学、治療、予防、栄養」炎症や関節の損傷について説明し、ダンサーのケガと予防、さらに栄養についても述べられている。第3章は「ダンサーに起きやすいケガ:原因と治療」、第4章「筋肉を鍛えるエクササイズ」、第5章「テクニックの間違いと体の構造の個人差:原因、影響、治療」となっている。それぞれに精細な図解、ダンサーの例示写真、レントゲン写真が付されていて、ヴィジュアルにも理解し易い記述となっている。

また、監訳者の平石英一は、1998年以来永寿総合病院でバレエ外来を担当しており、豊富な治療経験を踏まえてこの書の重要性を説いている。
「ケガの原因はささいな事故かもしれませんが、多くの場合は、始めの頃は目立たなかったテクニックの間違いや、それまで気づかなかった体の特徴が原因となっています。予防に越したことはありませんが、ダンサーが必要とすることを十分に考えに入れて適切な治療をすることが、きわめて大切です。しかし、適切な治療を見いだすのは、いつも簡単ではありません」この1冊は、そうした観点から、バレエ教室などに常備して、いつでも自由に閲覧できるようにしておくと良いのではないだろうか。

『ダンステクニックとケガ----その予防と治療』改訂版
ジャスティン・ハウス+モイラ・マコーマック/著
平石英一/監訳、白石佳子+水村真由美/訳
大修館書店/刊
定 価:本体2,800円+税