(荒部 好)

『Ballet 魅惑のバレエの世界』ー入門編ー

渡辺真弓/著  瀬戸秀美/写真

今日のクラシック・バレエの全体像を紹介する『Ballet 魅惑のバレエの世界』ー入門編ーが、青林堂より刊行された。

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この本は、1)世界の有名なバレエ団の紹介。2)クラシック・バレエの古典名作を、チャイコフスキー三大バレエ、ロマンティック・バレエの名作、ミンクスの名作バレエ、に分けて物語や上演史をまとめている。3)バレエ・リュス(ディアギレフが率いたロシア・バレエ団)の奇跡。4)パヴロワやニジンスキー、バリシニコフやギエムといった、伝説的なスターダンサーの紹介。5)バランシンからフォーサイスに至るまでの著名な振付家の紹介、と全体を5章に分けて構成している。

著者は、1991年から15年間パリに滞在し、その間オペラ座やパリで上演されたバレエを見続けた。そしてパリ滞在中、Dance Cubeには創刊以来2006年7月まで、オペラ座を中心に舞台紹介や情報を寄せていただいた。
ヨーロッパでバレエを見続けてきた豊富な鑑賞体験を基にして、クラシック・バレエの今日を、要領よく分類し、説明している。「入門編」ということなので、万遍なくそしてバランス良く紹介されているので、初心者も全体が把握し易くて読み易いだろう。ただ、バレエ団に関してはのクランコの名作の『オネーギン』など、あるいはノイマイヤーの『椿姫』、といった現在、最も多く上演されているかもしれない、人気の高い作品を生んだ振付家を擁する(クランコは亡くなってしまったが)バレエ団も、1ページを割いて紹介して欲しかったようにも感じた。

また、有名バレエ団の紹介などにあたっては、じつにわかりやく丁寧に説明されている。しかし、グリゴローヴィッチの時代などは確かに彼にとっては「黄金時代」であったかも知れないが、常に批判にも晒されていたこともあったと思われる。そうした点には触れられていない。もちろん、そちらに論を進めてしまうと、特にバレエ界は袋小路なのだが。でも、あくまで非難ではなく批判があったことも紹介すると逆にその時代が良く理解できる、ということも考えられるのではないだろうか。
入門書の次の段階としては、対象に距離をおいてを客体化した紹介の書が求められると思われる。

『Ballet 魅惑のバレエの世界』ー入門編ー
渡辺真弓/著
青林堂/刊
定価/本体1,700円+税