(荒部 好)

『ダンスの言語』動きを 読む・書く・表現する

アン・ハッチンソン・ゲスト、ティナ・カラン/著
森田玲子、酒向治子/訳

ハンガリー出身で舞踊理論家、振付家としてドイツ、イギリスで活躍したルドルフ・フォン・ラバンが、舞踊記譜法としてラバノテーションを確立したことは良く知られている。現在は、ロンドンのラバンセンターが単科大学として活動し、その舞踊研究を継続している。

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本書を著したアン・ハッチソン・ゲスト博士は、ラバノテーションの専門家であり、それを基礎としてLOD(ランゲージ・オブ・ダンス)を1970年代後半に作った。ラバノテーションは動きの正確な記録を旨としているが、LODは「動きを読む・書く・表現する」ことに重点を置いている。人間の身体運動の根幹的要素として、動詞(おもな動き)、副詞(動きの質)、名詞(身体の部位)などに分類し、「身体言語」として体系化したものである。また、LODは略して「Your Move」とも呼ばれる。本書も原題「Your Move」を表紙に掲げて、LODを理論的に紹介する書となっている。
原書は「Your Move」は、全体を22章に構成しているが、邦訳は「基本的な動き(prime actions)と呼ばれる16の要素を論じた11章までを翻訳したもの。

それは
1.「動き、静止、タイミング、シェイプ、アクセント」
2.「トラベリング」
3.「トラベリングのバリエーション」
4. 「サポートがないこと:スプリング(跳躍)5つの基本型」
5. 「方向----空間の定義」
6. 「方向----空間のさらなる探究」
7. 「曲げる、伸ばす」
8. 「ローテーション、レボリューション、ターン」
9. 「からだのサポート、サポートの変化」
10. 「バランス、バランスの喪失」
11. 「関係性」

となっている。

この目次を見ただけでも、一般的に「動き」がどのような構成要素から成り立っているかを理解することができる。LODではこれらを動きを構成する最も基本的動作を、言語にアルファベットに相当するものとしている。そしてこれらの動作はさらに細分化され、その組み合わせにより様々な動きの連続性が生まれる。そうした動きの積み重ねが、ダンスを導いていく。
本書は、それぞれの章の最後に「練習課題」が付されていて、それと取り組むことによって、実際に身体を動かすことによる理解を深めることができる。
ダンスの創作に関わる人のみならず、ダンスの舞台を観るだけの人でも、LODの理論に従って動きを細部にわたって分類し、「読む・書く・表現する」を実践していけば、初めて言語を習得するかのように新しい地平が拓けてくるだろう。