(荒部 好)

『ベリーダンスの官能』ダンサー33人の軌跡と証言

関口義人 著

これまでは日本では話題されることもなかったベリーダンスが、近年、大いに注目を集め、修得しようとする人や鑑賞する人が急増している。
現在活躍中のダンサー33人にインタビューし、そのフィールドワークに基づいて文化的歴史的背景を解き明かし、ベリーダンスの魅力のすべてを解説してくれるのが本書である。

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ベリーダンサー33人と関係者5人へのインタビューがおもしろい。ベリーダンスが良く知られるようになったのが近年なので当然だが、クラシック・バレエのように習い始めたら一生続けた、という人はほとんどいない。なにか別なダンスや他の習いことから始めて、紆余曲折を経てベリーダンスに行き着く、というケースが多い。そうした点をインタビュアーである著者がサブカルチャーとの関わりなどともに、注意深く質問している。
おそらく自分自身を表現するのに適したジャンルを、自分の力で探し当てたダンサーが多いのだろう。そこにベリーダンスの魅力の秘密ひとつがあるのかもしれない。
それだけにそれぞれのダンサーがその魅力に辿り着くまでの人生は、起伏に富んでおり、<踊りは身体であり、表情であり、表現であり、思想である以上に「人生」そのものだ>と著者があとがきで結んでいる言葉に説得力を与えている。

ダンサー・インタビューの間に、7項目に分けてCOLUMNが著者によって書かれている。これはCOLUMNというよりもかなり精密な文章であり、アラブ文化のコアであり、日本人にも比較的親しみやすい『アラビアン・ナイト』から筆を起こしている。そしてベリーダンスの元と目されるエジプトのガワズィー・ダンス、今日のベリーダンスの中心地のひとつであるトルコのターキッシュ・ロマ、さらにアメリカに上陸して新展開を見せた様式のトライバル、について解説している。ベリーダンスの展開の中で、関わりの深いジプシーの位置も他のフラメンコなどとの関係と分かり易く説明されている。こうしたところは私たちは混乱しがちなので、たいへん有益な文章であった。

『ベリーダンスの官能』ダンサー33人の軌跡と証言
関口義人 著
青土社 刊
定価 本体1,800円(税別)